- ロバート・ゴダード「蒼穹のかなたへ」文春文庫 加地美和子訳
- 終盤でいいように翻弄されてしまった。主人公が失踪した知り合いを探す話だが、登場人物同士で交わす会話に「ジグソーパズル」という言葉が出てくる。読み終えてやっと読者に対してもこれはジグソーパズルのような小説なのだ、ゴダードはそれを書きたかったのかと思う。登場人物の描写が上手いのでつい、謎解きの気分を忘れてしまうのだ。最後で失速せずに、かといってついて行けないほどの加速でもない、相応しい時間をかけて書いたのだろう、相応しい時間をかけて読めたと信じたい。
- 今泉忠明「イヌはそのときなぜ片足をあげるのか」TOTO出版
- 十割中の十割までタイトルに負けた本だ。版元の名に駄目押しされてつい読んでしまった。中身は至極まともな動物にまつわる糞尿譚であり、期待以上とも期待以下とも言い切れない、不思議な本だった。トイレに置いておけば丁度よいのかもしれない。
- ローレンス・ブロック「緑のハートを持つ女」創元推理文庫 田口俊樹訳
- ブロック初期作品のコン・ゲームで、これが五十年前に書かれた物とは思えない。途中で出てくる土地の値段が変なので原作刊行年を見ると1965年、当時の雰囲気を感じさせないのは意識してそうなっているのだろうか。
原題は「THE GIRL WITH THE LONG GREEN HEART」