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北原保雄編「明鏡国語辞典」大修館書店
 初版が二〇〇二年十二月であるからとても新しい机上国語辞典である。
 まず最初に確認するのは当然「こうしょう」の見出しであって、この明鏡では十八個収録されている。岩波国語六版が十七個であったからひとつ多いわけだが、突き合わせてみると多いのは「校章」なので大した違いではないのだが、並び順が当然のように違う。見出しのかなが同じ場合、岩波は活用語→無活用語の順であるが、明鏡の場合これが逆である。品詞までもが同じ場合の和語→漢語→その他とこれは同じであるものの、明鏡は活用語、つまり動詞の活用順を完全に定義している。自五段→他五段→自四段→他四段→略→自ラ変→他ラ変→特殊活用、と活用を網羅した定義をもとにして順番付けている。同じ見出しでそうそう重なることなど滅多にないが、それでもここまで徹底して順番を決めておくと配列に迷いなど全くなかったに違いない。
 また活字がかなり大きく感じる。実際大きいのだが、さほどの違和感がないのは素晴らしいことだ。岩波の収録数が六万三千項目に対して明鏡は約七万項目、人名が殆どないからこれは実質岩波よりも遥かに中身が濃いことになる。
 編纂の基本方針が「日本語運用の”達人”となるべく表記・意味・用法の的確な情報を盛り込む」(凡例より)
 「確かな日本語を!」という叫びが込められているようでもあるが、この辞典は普通に読んでいて実に楽しい。言葉言葉がしっかり定義されているからであって、単なる言い換え語集辞典とは明らかに違うものだからこの辞典は「言葉の意味を知りたい」ではなくて「言葉の正確な意味を知りたい」とする人向けでもあるから、これに慣れてしまうと他の辞典に物足りなくなってしまいそうで怖い。しかしこの辞典のような確実な定義をこそ、本来は辞典のあるべき姿だから、これが最低線として、今後新たに出る辞典は明鏡をハードルとせねばならない。
 所々にイラストがあり、コラムがあり、これは中学生、高校生が学ぶに絶好の辞書であるが、それは同時にすべての世代が日本語を学ぶに絶好の辞書でもあるということである。
 それぞれの格助詞の整理された説明には感動したし、もう虜である。机上国語辞典次に買うのは、これしかない。辞典ではあるが、自信を持ってお勧めする。
タゴール「タゴール詩集」彌生書房 山室静訳
 下手に真似をしても、ただのスケッチにしかならないような詩。インドのノーベル詩人である著者の複雑な宗教環境から生まれた言葉が紡ぎ出す印象が、宗教を越えて評価支持されていることは、何かを示唆している筈だ。
 訳者の山室静は神話に強い人だが、これを最初に訳したのは昭和十八年、あの戦の真っ只中に、形の上とはいえ敵性国人の詩を訳した人でもある。以降三度目の翻訳・出版にしてほぼタゴール詩の山室静訳定本と見てよいそうだ。
 インド詩人であることノーベル賞詩人であることを知らないまま読んでみて、不思議な詩だなと思って後書を読んだらいろいろ新鮮なことが書いてあった。奥付を見ると46刷、読まれているようだ。
古田武彦「盗まれた神話 記・紀の秘密」朝日文庫
 邪馬台国についての本をある程度読んでいると、必然的に古事記・日本書紀を避けて通ることが出来なくなる。この本はその記・紀そのものの内容や成立過程を再検証した上で、なかなか面白いところに着地している。
 少々強引な気もしないではないが、強引を通り越して語呂合わせに終始している数多の本よりは、遥かに説得力がある。記・紀を解き明かす過程での、自ら取り決めた条件に自ら従ってついには全ての筋を通しきったことは、以降記・紀について、邪馬台国について書く上で無視できない力を持ったことになる。
 神代文字について、転場衆について、この人の考えること、書いたものが是非読んでみたい。他にも色々著作があるようで、この人は狩りのリストに追加した。
 具体的な内容に触れるわけにはいかないのだが、邪馬台国周辺に興味があるなら一度読んでおくべきである。
金田一春彦「ことばの歳時記」新潮文庫
 素晴らしい。辞書と日本語が好きなら「金田一」の名を避けて通ることが出来ないわけだが、それが奏功して読むことになった。普段「歳時記」と名のつく本は意味もなく敬遠していたのだが、著者名に惹かれてぱらぱら見ると、句ではなく言葉が挙げられていたから買ってみて、大当たりだった。
 昭和四十年の一月から十二月まで東京新聞と中部日本新聞に「ことば歳時記」と題して連載した短文で、一編およそ四百字の、三百六十五編ある。日と季節に合わせた言葉を選び、命日・記念日などを絡めながら軽妙洒脱な文章で綴っている。この短さの中にことばの成り立ち・解釈・古義・冗句を織り交ぜて、窮屈をまるで感じさせずに構成されている。達意の文とはまさにこれだ。知らなかった意味・しきたり・約束事など知識の泉、そこらへんの豆知識文など足元にも及ばない。あまりにもタネを拾い過ぎて焦るくらいである。
 言葉に日本語に、特別の興味がなくても読んでみて損はしない。保証する。絶対読め。もしも立ち読みするならば、八月二十一日の「ヒグラシ」を開くとよい。一番お気に入りのどたばただ。一読即買やんややんや。
ピーター・ラヴゼイ「煙草屋の密室」ハヤカワ文庫中村保男・他訳
 御存知ラヴゼイの、これは短編集。十六編収められていて、男女の機微あり、精巧などんでん返しあり、軽いどたばた色で彩られた粒揃いの逸品である。
 中でも「Did You Tell Daddy?」(パパに話したの?)が楽しい。迷うならこの一遍を立ち読みすればよい。必ず買いたくなる。ラヴゼイを知らなくても、普段小説を殆ど読まなくても、これなら誰でも気に入る短編集である。
 翻訳者は他に高見浩や深町眞理子の大御所の名もあり、確かに「ラヴゼイ」という統一テーマはあるが、一遍一遍の構成はそれぞれに趣向が凝らされており、翻訳者も違うことから、同一作者の短編集でありながら、異なる作者を集めた短編集の雰囲気を纏った、これからの季節に相応しい、枕元に置いてえくべき本である。お勧めだ。読めい。


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