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「鮭の一生」新潮社
 この妙なサイズの本に何故眼が止まったか。著者が「稗田一俊 野田友佑 他」これだ。野田友佑。「他」とは村上善男と萱野茂、豪勢な顔触れだ。1985年の発行で、写真とルポのやや硬い内容だが、当時の鮭行政、鮭環境がよく判る本となっている。当然野田ファンとして眼を疑うわけだが、確かに若き野田友佑が写っている。多数出た本ではないだろう。野田ファンにあっては是非見ておくべきだ。
丸谷才一「笹まくら」新潮文庫
 評論家は泳ぎ方の講釈を垂れるカナヅチだと罵られる存在であるが、丸谷才一にあっては誰もが例外と認める。例外だからこそ彼の場合は肩書きが「評論家」ではなく「文学者」なのである。
 小説の形にして国家を論じた「裏声で歌へ君が代」の萌芽となったらしき個所があり、もしかして発表順に読んだならば別の見方が出来たのではないかと思うと悔しくもある。
 この作品について書かれたあらゆる文章は解説の篠田一士の美文の前に全て塵と化す。さすが丸谷才一が解説に選ぶだけのことがあって、これを読むと書評も紹介もそしてただの感想文さえも書けなくなる。
 この本は途切れ途切れに読んではいけない。激しい酒を用意して、用便その他を済ませて落ち着き、寛いだ気分になったところで一気に読んでしまおう。
 本書はおよそ四十年前に発表された。四十年前とはとても思えない瑞々しさに溢れた流れるような文章に酔わされていた。魂抜けだ。実のところ「凄い」の一言で十分だ。
玉手英夫「クマに出会ったらどうするか」岩波新書
 話は恐竜から始まるので戸惑うかもしれないが、じっくり読めばそこかしこでとぼけた表現にぶつかり思わずにやりと笑っている。タイトルは章題のひとつで具体的にどうすればよいのか書いてある。その通りに出来るかどうか知らないが、この人が好んで読む本はきっと手前と似ているだろうなとは思う。
J・ヘリオット「ヘリオット先生の動物家族」ちくま文庫 中川志郎訳
 中川志郎訳のヘリオット。1978年に刊行され、文庫に入ったのは1989年。早くに翻訳されていたものだ。読んだことのあるエピソードがあり、初めてのエピソードがあり、読んだことがあっても訳者が違うので新鮮であった。
 連作短編ではなく長編として扱ってあるが、それぞれの章はほぼ独立しているので一気に読む必要はない。しかし面白いのでどうしても一気に読んでしまうことになる。
 訳者の中川志郎氏は獣医であるそうで、だからこそややこしい専門用語を完全に理解した上で噛み砕いてわかりやすい文章になっている。
 他の翻訳物よりドタバタ具合が抑制されており、時系列をわざと混乱させてあるので極上の聞き書き或いは語り下ろしを思わせる。是非暖炉の傍で朗読を聞きたい本だ。
 面白い。ヘリオットは外れなし。
今泉忠明「進化を忘れた動物たち」講談社現代新書
 語り口が妙に笑える。図や写真が多く、読んでいくと「進化の生き証人」に不思議と惹かれてゆく。これを読んで「カモノハシが毒を持っていること」を初めて知った。レッドウルフの剥製写真、オカピの伝線した色っぽい太腿、その他その他、読んで楽しく見て楽しい。ブルーバックスではなく現代新書であることに改めて驚く。
 山本匠のカバーイラストが秀逸で、この人の絵をしばらく追いかけてみたくなった。
山本夏彦「私の岩波物語」文藝春秋
 日本でたった一人本物と呼べるコラムニストの、これは著者が経営していた出版社「工作社」の社史である。しかし社史とは売れないものと相場が決まっていて、資料的価値しかないものであるが、直木賞作家和田芳恵が手掛けた筑摩の社史だけは読むに耐えると言う。
 自らを語るふりして言論と出版の百年小史を意図し、筑摩に続く「読まれる社史」を目指したこの本は、言論と出版の問題を余すことなく抉り出している。
 題名に岩波があり、当然岩波を鮮やかに斬っている。何が鮮やかかと言うと、読めば判る。
 岩波、講談社、社史、建築雑誌、電通などの広告代理店、筑摩、赤本、中央公論、原稿料、髪、印刷、製本屋、取次、あっちを褒めてこっちを刺し、まさに山本夏彦の至芸が全て詰まっていると言える。
 実は山本夏彦のコラムに解説など要らないし、半端な書評もかえって底が割れてしまう。誰も書かない、書けない、当たり前の事を、当たり前に書いているだけであって、ただそれを読めばいいのだ。
 全集をどこか出さないか。必ず買うぞ。
吉葉繁雄「フグはなぜ毒で死なないか」講談社
 フグに限らず経皮毒生物を中心に紹介している。サンゴを喰い荒らすオニヒトデが毒を持っている事は知っていたが、オニヒトデの幼生はサンゴの餌であることは知らなかった。妙な連鎖であるが、そのバランスを崩してオニヒトデが異常繁殖する理由は、改めて言うまでもないだろう。
 イカソーメンに刺される話は怖い。怖すぎる。
 フグが毒を自家生成しないことは以前何かで読んでいて知ってはいたから、では何故フグ自身毒で死なないのかを知りたかった。読んでみると著者はフグ毒の章末に「推論」としてあるから、この本はタイトルに負けているわけだが、それでも身近な有毒生物について学べる本でもある。
 高田爬虫類研究所が後書とカバー折り返しに顔を出していて、これは椎名誠と回路が出来たわけだ。
上田篤+世界都市研究会編「水網都市 リバーウォッチングのすすめ」学芸出版社
 都市に於ける水路空間の復活を扱った論集であり、親水都市のボストン・蘇州・ヴェネツィア・ソウルそして大坂を中心に考察している。
 国内の水郷レベルでは柳川・郡上八幡・近江八幡、その他ずばり水郷と名の付く地名も多々あるし、無理矢理水郷を僭称している地域もあるが、大都市として、水路を機能的に利用し、また水に馴染んでいた街は今、水路の保存に尽くしたり浚渫水路復活派と、埋め立てて水網都市であることを捨てようとしている乱開発派に二分され、またここまで各地の行政体が肥大すると新たに水網都市を作るなど夢物語でもあるからして、例えば日本ならば、江戸・大坂の水路空間を捨てて残るのは無機質なスプロールに揉まれた雑然都市であり、そこは全てが淀んでいて、水を恋う心は叶わないことになる。
 浄化作用があり、都市の温度調節を担い、かつ運搬利用、そして親水と水が身近にあることの効果は計り知れず、しかし効率優先安全確保の御旗の元に水路を寸断し、埋め立てて、それを発達発展と呼んでいることは、そのまま我々が水と触れないことで窒息する状況を生んでもいるのだ。
 論集であるから表現面での面白さは期待しないほうがよいが、しかしこれは元々河縁を散策するのことの好きな者が集まって何やら出来上ってしまった本であり、副題に「リバーウォッチングのすすめ」とあることからも、水辺の楽しさ美しさを奥の方に隠して謳ってあることがテーマでもあるので、蘇州・ボストンの紹介は大変魅力的である。
 この本より先に出た「水辺の都市」が読みたくなった。


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