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大田蘭三「浪人釣り師今昔」角川文庫
 釣りに関してのエッセイと浪人釣り師が活躍する捕物帳の短編が二本収録されている。読み手を選ぶ本だ。
ジョン・マクフィー「バークカヌーは生き残った」白水社 中川美和子訳
 バーチの樹皮を使って作る古式のカヌー製法を独学で学び、今では第一人者として伝統を守る男、そして彼と共にそのカヌーを使って川旅をする話。
 カヌー作りは最高の腕前でも川旅は四回だけという彼のカヌーに対する姿勢の、真面目なノンフィクション調の雰囲気で始まった話は次第にどたばたの様相を帯びてくる。乾いた文体でどたばたを冷静に書くものだから上りきった階段の上で蹈鞴を踏むが如くペースを乱され、次第に引き込まれてゆく。
 エドウィン・T・アイニーのカヌースケッチと各インディアン部族の特徴を捉えた写真が巻末にあることも嬉しい。
 たまたま手に取った本であったが、どこかで見た言い回しが出てきた。見たというより読んだ筈だ。恐らく誰かの文中で引用されていたに違いない。野田友佑か椎名誠か他の誰かか。
 アウトドアと野田友佑に興味があるなら読んでおこう。
宮治誠「カビ博士奮闘記」講談社
 面白くても下らない本は大変多く、読んでも紹介には及ぶべくもないが、下らないが面白い本なら読んだことに誇りを持てる。そして、役に立つ上面白い本など滅多にあるものではない。これはタイトル通りの本である。副題に「私、カビの味方です」とあり、村松友視の影響が見られる。となれば真面目な本の筈がない。
 この本、迷ったならば中を開いてぱらぱら見る必要はない。裏表紙折り返しの著者紹介文を読んで感応すれば読むといい。
 著者の好きなビールは以前が「一番絞り」で今は「ヱビス」とのこと。 今尾恵介「地図の遊び方」新潮OH!文庫
 飄々とした文体に爆笑した。地図マニアらしいのだが、文章がとても面白い。他の本も全て読みたい。この本ではオーストラリアの世界地図には言及していなかったので、こちらに宿題が増えた。
丸谷才一「大きなお世話」文春文庫
 解説は筒井康隆フリークなら御存知の、末代まで祟るらしき百目鬼恭三郎である。彼が解説で本書について全てを書き尽くしているのでどうにも刻むことが出来ない。1970年前後の時事エッセイであるが、面白いことは保証する。
青柳昌宏「ペンギンたちの不思議な生活」講談社ブルーバックス
 各章扉のイラストもいいし、多く載せられている写真のキャプションも楽しい。プルーバックスでげらげら笑ったのはこれが初めてだ。各章のタイトルもそそられる。
 著者が既に物故していることが悔しい。もっと読みたいではないか。構成のセンスがとてもよく、ブルーバックスに押し込めておくのは勿体無い。単行本化でも文庫化でもすればいい。爆発的に売れはしないだろうが、ペンギン入門書として隠れたロングセラーになる筈だ。
P・J・オローク「ろくでもない生活」JICC出版局 山形浩生訳
 プロジェクト杉田玄白を率いる山形浩生の翻訳による分類不可能な文章集。エッセイか、コラムか、ドタバタか、そのどれでもあり、どれでもない位置にあり、捻くれた文体に大いに惹かれる。
 この真顔で与太を飛ばすスタイルが非常に好きなので、一気に読んでしまったのだが、勿体なくてもう一度読んでみたら変わらず面白い。再読に耐え得ることは良書の必要不可欠の条件であって、一度読んで満足してしまう文章などは読まないも同然なのだ。
 ( )を使って自らに突込を入れたりする言訳めいた遜り文体は嫌いなのでこれくらい堂々としているとさっぱりしていて実に清々しい。また、一九九三年の刊行ではあるが、現在は差別語してあまり見なくなってしまった言葉があちこちに出てきて、これは翻訳であるからまだ網が緩いのかもしれないが、その奔放さは爽快でもある。
 折角いい本を読んでもこちらの文章には力がないのでその魅力を伝えることが出来ないことは申し訳なく思う。
柳瀬尚紀「広辞苑を読む」文春新書
 本邦一と思われる辞書マニアにして翻訳者の柳瀬尚紀が、広辞苑で徹底的に遊ぶ。これは一応「広辞苑」「大辞林」「大辞泉」にはそれぞれ一長一長があって「悪いとかそういうわけではない」ことを言っているが、散弾銃のような突込をしておいて慰めの言葉としては少々釣り合いが取れていないようにも思う。それでも辞書が好きで好きで仕方がない雰囲気が文間から滲み出ており、同じく辞書マニアとしては読んでいて楽しい。ただし、柳瀬尚紀の著書であるから重力場の異常がそれなりにあって、読んでいるうちにお脳が浮遊してしまうことは避けられない。語呂合わせもこの人ほど徹底してやると嫌う人もいるだろうから無理にお勧めはしないが、普段、辞書に不満を抱いている人は読むと楽しめるかもしれない。
金武伸弥「広辞苑は信頼できるか」講談社
 タイトルにつられたが、これは広辞苑弾劾の書ではなく、日本で出ている代表的な辞書を二十種選び、可能な限り公平な立場で論じたもので、辞書を選ぶにあたって迷っている時はこの本を読めば、自分がどういう時にどういう語を引き、そしてそれに応えてくれる最もふさわしい辞書は何かが判る筈だ。
 二十種に加えて小学館の日本国語大辞典の計二十一種なのだが、日本国語辞典は他と比較するものがないほど大部のものであり、特別扱いとしている。実際個人で使うだけなら手に余る。嵩張り重いので仕方がない。
 この本を読んで国語小辞典を「岩波」から次は「新明解」か「三省堂国語」に変更しようと誓った。影響力の大きな本だ。
谷沢永一 渡部昇一「広辞苑の嘘」光文社
 谷沢永一は開高健のエッセイ全集を編んだ同人「えんぴつ」よりの友である。渡部昇一は筒井康隆と因縁があり、どちらも知らない名前ではないし、タイトルで十分信用出来る筈だという計算は当たった。広辞苑の、欺瞞と思想誘導の実態を明かしている。小気味よく急所を衝く文章を読んでいると知らず知らず広辞苑に対しての見方が変化していることに気付く。
 手前は大辞林派であるからなおのこと楽しめたが、少々右がかった内容に戸惑いを感じる人もいるかもしれない。しかしその論調は決して不愉快なものではない。
寺田寅彦「柿の種」青空文庫
 とてもいい。しかし大切に待機させているレトリックが山のようにあったので、それらの待機文章は解散させることにした。悔しいが、才能には勝てない。面白いから読め。 ジョージ・オーウェル「一杯のおいしい紅茶」朔光社 小野寺健編訳
 オーウェル流の紅茶作法はミルクが後で、その理由はミルクを後から入れるならば微調整が出来るからというもの。
 オーウェルといえば「1984年」しか浮かばないほど、強烈な印象があるわけだが、実は膨大な評論、書評、エッセイを残している。英国の「書き下ろし単行本にあらざれば本にあらず」の風潮の中、「連載をまとめて本にする」と友人への手紙に書き残していたりする。本書は書簡、書評、評論、エッセイなど、未訳のものを含めた肩の凝らない、英国の素顔を垣間見ることの出来る本であり、当時の書籍や流行歌のくだりもあるのでイギリス回路のひとつとなるであろう本でもある。
ローレンス・ゴールドストン ナンシー・ゴールドストン「古書店めぐりは夫婦で」ハヤカワ文庫 朝倉久志訳
 ともに作家である夫婦が古書熱に感染し、それについての本を書けば経費で落ちるのではという考えから生まれた共著のノンフィクション。ところが大絶賛を浴び、色々賞を受け、既に続編続々編まであるらしい。
 誕生日プレゼントから始まった古書熱は次第に重くなり、回復しないまま初版本へ、そして稀覯本へとのめり込んでゆくその過程と熱に浮された会話と意味不明な情熱には、感動と呆情が渾然一体となって迫ってくる。
 しかしこれは回路の要としても役に立つ本で、古書入門というよりも現代作家の入門書として読む価値がある。ただし「現代」とは「現在」ではないことを為念。
ニューサイエンティスト編集部編「つかぬことをうかがいますが・・・」ハヤカワ文庫 金子浩訳
 副題に「科学者も思わず苦笑した102の質問」とある。これらの質問が実に馬鹿馬鹿しくて下らない、そして切実に答えを知りたいものであるから、目次を見ただけで必ず読みたくなる。しかしこの本がそこらの雑学本と決定的に違うのは、雑誌の最終ページに載せられた読者の質問と読者の回答を纏めた本である故に、質問も回答も素人のの手によるものであるから、「真顔で与太」というイギリス的韜晦を存分に楽しめる。質問に対する複数の回答は、一体どれが正しいのかは結局自分で調べるしかなく、ごく自然に理想の読者にさせられてしまっている。なにしろ「これが正しい」とは書いておらず、下らない質問と下らない回答の応酬を見てげらげら笑う本であるから、複数載っている回答の与太、法螺、適当、中には回答なしなどなど、雑学本と呼べるかどうか怪しいが、そういう風体をしているから騙されて読むと虜になる筈だ。答えが先にあり、それに行き着くような不自然な質問を並べるありがちな雑学本とは格が違う。
 だから例えば雑学系の「著作権なんて何も知らないよぱくりまくりメールマガジン」などで盗用される恐れもない。「正解がこれ」とは載っていないから下手に盗用すると恥をさらすだけであるからだ。
 「質問一覧を兼ねた目次」を見よ。それだけで十分笑える。枕元に置くナイトキャップに相応しい本だ。阿呆らしくて笑えるから読め。ただしこの本を信用すると貴方が笑われる。
西山豊「ブーメランはなぜ戻ってくるのか」ネスコ/文藝春秋
 ブーメランが戻ってくるにはそれなりの理由があることが判ったが、それを理解するのが無理な事も判った。それよりもブーメランの発展史や具体的な投げ方を細かく記述してあることが嬉しく、そしてもし数式を理解できるなら自分でブーメランを削り出すことも出来るという、初心者から上級者まで全方位型の読者を欲張る作りになっていて、見事な本だと感心する。


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