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パブロフ
コロンブス
アルキメデス


「偉人の伝説ってどこまで本当なんだろう?」

「本当なら伝説とは呼ばないね」

パブロフ 04/01/14

 イヴァン・ペトローヴィッチ・パブロフという男がいた。

 神学校と神に愛想を尽かして遁走し、ペテルブルグ大学物理数学部で学問を修め直す。後の軍医学校である外科医学校へ編入し、やがて「心臓の遠心性神経」の研究で学位を得る。様々な実験報告で名を売り、ペテルブルグ実験医学研究所の生理学部長、のちに軍医学校の生理学教授となる。

 教授となって七年後、友人から犬を貰う。その名前は伝わっていないが、口の締まりの悪い犬であったらしい。犬種も詳細は不明である。食物を見る度に涎を垂らすところを眺めていたパブロフ博士は1902年、退屈凌ぎに意地悪をしていた。餌を見せるだけで焦らしているのだ。餌を見ただけで涎を垂らし、勝手にお座りして尻尾を振っている。暫く待たせていると何も言っていないのに、流れるような動作で自ら「お手」「お代わり」「伏せ」「座り直せ」をしてから目を輝かせて尻尾を振りながら涎を垂らしている。

 「ノルマをこなせばよいというわけではない」「お手は言われてから手を出しなさい」「伏せと言われたら別命あるまで伏せていなさい」懇々と諭す博士の言葉を聞きもせず、ただ尻尾を振って涎を垂らす姿は主人である博士に忠実なのか、本能からくる食欲に忠実なのか、餌に忠実なだけなのか判然としないが、いつしか足音だけで涎を垂らすようになってしまったので、博士は考えた。「足音を餌の前触れと捉えているのか。頭がよいのか、恐るべき喰い意地か」

 博士の頭上で豆電球が灯る。足音を聞いて涎を垂らすならば、餌を与える前に何か別の合図をすれば、その合図を食事と勘違いするようになるのではないだろうか。

 博士はベルなど持っていなかった。しかし夫人に音楽の素養があり、メトロノームを所有していた。食事の前数分間メトロノームで拍を刻むところを聞かせて、犬が眠りに落ちそうになった瞬間に餌を与えること数日、何とこの犬はメトロノームを聞いただけで涎を垂らすようになったのだ。催眠術の夜明けである。

 どうもこれは何かとてつもない発見であるような気がした博士は、改めて涎の量を計りながら正式な実験を続け、途中でノーベル賞などを貰いながら1923年に研究を集成して発表、その名を不滅のものとした。

 Ivan Petrovich Pavlov 1849〜1936

 付記:ただし博士が犬に与えていた餌、実は梅干であったという事実は公にされていない。


コロンブス 04/03/16

 「コロンブスの卵」いう逸話がありますな。

 何でも地球を一周したことになるコロンブスが酒場で「やろうと思えば誰でも出来る」と挑発されて、そう言うならばと「われ卵立てれるんけ」と仕掛けると、どうしても立てられない。おのれは出来るのかと言われたコロンブスが「よっしゃ見とけ」と卵の尻を潰しながら立てると「やっぱり誰でも出来るやんけ」「やり方知った後なら誰でも出来るがな。要は初めて出来るかどうかやがな」

 そういう印象の話として誰でも聞いたことはある筈だ。しかし誰一人その場にいた者はいないからこれは真実かどうかを知ることは無理であって、しかしこの逸話がある以上コロンブスは実際にこのようなやりとりがあったと見ることに異存はない。またこの話は恥ずかしいくらいの人生訓として多用されているが、それは確かに幾許かの真髄を衝いているからであろう。

 ただ気になるのは、コロンブスより先にその話が出ているということだ。コロンブスが生まれた頃に死んだイタリア初期ルネッサンス時代の建築家「フィリッポ・ブルネレスキ」の逸話として存在していた。それが新大陸再発見の業績に少しだけ効かせた香辛料としていつの間にかコロンブスの話になってしまった。直接の邂逅はなかった筈だが、噂と手紙が通信手段であった時代に楽しげな話が都市を越え国家を超えて流通していたとしても不思議ではない。

 つまり言いたいのはこうだ。「コロンブスの卵の話」を人生訓と言い張る奴は「卵を割って立てた話」はコロンブスでないことを知らない奴であり、コロンブスが横取りを意図していたかどうかは判らないにしても、その話を聞いたことがあってやってみた可能性はあり、それを目前で見た奴はブルネレスキを知らなかったかその話を聞いた者がブルネレスキを知らなかったかしてコロンブスの逸話として拡めてしまった。今ブルネレスキを知らないのは彼等と同じ立場にあるわけだが、それでもブルネレスキを外してコロンブスが一人歩きしてしまったことは、「コロンブスの卵の話」に「収穫逓増」或いは「やったもん勝ち」という意味を込めることも可能であり、これも確かに人生訓として真髄を衝いているから言葉の上で矛盾はないが、さらにもうひとつ「歴史は歪む」という意味を裏に隠した深い言葉であると、知っておけば楽しいわけだ。 

 「最初に実行した者が賞賛される」というコロンブスの逸話それ自体が既に矛盾を抱え込んでいるのだ。

クリストファー・コロンブス
Christopher Columbus
1446-1506
ジェノヴァ出身
西班牙代表海賊

フィリッポ・ブルネレスキ
Filippo Brunelleschi
1377-1446
フィレンツェ出身
ルネッサンス時代の伊建築家


アルキメデス 04/10/04

 アルキメデスという男がいた。

 シチリアで生まれエジプト留学して数学・物理学をものし帰国、以降数学に熱中した。

 ある時ヘロン王がお抱えの金細工師に純金の冠を作らせた。大変立派な王冠に満足してアルキメデスに「私の富と金細工師の技術でこの素晴らしい王冠が生まれた。比べてお前の研究は何も生まないではないか。この王冠以上の何かを作り出して私を瞠目させてみたまえ。出来なければ首が離れるよ」と告げた。

 仕方がないので取り敢えず王冠を借り受けて家に帰った。まずは詳細な三面図を起してみたが、こんなものがあっては忽ち偽物が出ると思い至り燃やした。では精巧な偽物を作って並べ立て、超えることは出来なくとも同じ程度の物を作り出すなら出来ると考え、王に同量の金を借り、いざ偽物の製作に取り掛かった。物理学を嗜んだ経験を活かしてどうにかこうにかそっくりな王冠がほぼ出来上がりそうになったが、最後の額に位置する飾りの分だけ金がどうしても足りない。

 さてこれは如何なるわけかと製作の手を休めて考えながら食事をし、考えながら用便をし、考えながら入浴をし、考えながら眠った。起きてから念の為に余らせた金がないか探してみてもなく、重量を測ればよいことに気付いて測ってみると目方通りだった。同じ分量でありながら何故だか大きい金細工師の王冠を測ってみると、飾りの分だけ重い筈なのに同じ目方であり、いよいよここに苦闘が始まる。

 高さも幅も厚みも全てを完全に複製したのに分量が足りず、目方は同じ、調査の手を休めて考えながら食事をし、考えながら用便をし、考えながら入浴をし、考えながら眠った。起きてからこのふたつの王冠を売り払って逃亡しようかと考え、しかし今ではすっかり有名になってしまって町を歩けば指差されて取り囲まれる始末、金細工師の王冠にはどこかに空洞でもあるのかと叩いてみても鈍い音がするだけで中まで金が詰まっていることは明白であり、いよいよここに追い詰められる。

 とうとう疲れたので共同浴場に行き、一汗流しながら考え続けた。ここで諦めると首が離れる。かと言って手立てがあるわけでもない。どうせなら裸で町を走り回って狂人として恩赦に縋るか。しかしそれは首が離れるも同然の所業だ。そんなことを考えながらアルキメデスは体の垢をあらかた落とし、最後に金玉の垢を丁寧に落とし始めた。うむ。ふたつある。同じ金玉でありながら一個は小さく一個は大きい。何故だろう。アルキメデスは金玉の体積を一個づつ計算して左の方が体積も目方も多いことを求めた上で「同じ物質で同じ目方ならば同じ大きさになる筈だ」と改めて確認した。ならば。同じ目方で違う大きさになる筈がない。金は地上で最も重い物質だから、私の方が本物だ。金細工師の王冠は偽物の金だ。そうだ。それは何となく判っていた。ただそれを証明する方法がないのだ。

 「借した王冠に傷を付けても首が離れるよ」とも言われたから、そのままの形で体積を測らねばならない。長く入浴していたアルキメデスは体力の限界に来ていた。そして体力の限界に来た男は生殖本能が活発化する。アルキメデスは男だった。頭の血が股間に下がって体積を増し、朦朧とした頭で今ここに流入した血の量を測れば増した体積が算出可能になると思った。次の瞬間、弛緩した顔と怒張した股間を見て寄って来たホモに抱きつかれて焦ったアルキメデスは、共同浴場を飛び出し、恐怖に震えながら素っ裸で家まで走り帰った。

 「増えた体積は液体で測ることが出来る」

 こうしてアルキメデスは金細工師の王冠に使われているのが純金でないことを証明した。

アルキメデス
Archimedes
BC287〜BC212
シチリア出身
数学者 物理学者




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