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鶯・婆
鶯の
鶯が冠詞
鶯の冠詞
鶯は冠詞
鶯も冠詞
鶯を冠詞
鶯小ネタ集
法吉


「鶯は何故あんな声で鳴くの?」

「求愛というか、まあナンパだ」

鶯 03/08/29

 動植物の異名とは色々あるもので、特にそれが全国隈なく分布していて歌にでも詠み込まれていた場合は収拾がつかないのであって、その上更に方言があったりするから、例えば鶯の異名は幾つあるのかまるで判らない。鶯とは御存知「ホーホケキョ」と鳴く奴であって、雄は体長約十六糎、雌は一回り小さく、緑と黄色と灰色を混ぜたような、何と呼ぶのか判らないから最早「鶯色」としか言い様がないが、背はそういう色をしていて、胸から腹は白い。その情感溢れた鳴き声は古より愛でられ、紙幣に印じられている雉よりむしろ鶯を国鳥とした方がよいのではないかと思うのだが、その鶯の異名を並べてみる。

うぐいす現標準表記
うぐいす略表記
黄鳥うぐいす横に圧縮、「黄鳥」でひとつの字
うぐいすこういう字もある
うぐいす朝鮮ウグイスのこと
春鳥はるどり春に鳴く
春告鳥はるつげどり原因と結果の逆転表現
青鳥うぐいす緑は昔から「アオ」という※
吉鳥うぐいす縁起よろしく
金羽うぐいす舞子鳥らしき
歌詠鳥うたよみどり詠まれることの方が多いが
百千鳥ももちどり初出が不明確
楚雀そじゃく中国の故事から
谷鳥こくちょう谷渡りからきたのか、谷渡りになったのか
含桜鳥がんおうちょう日本ではどうか
黄頭鳥こうとうちょうそこまで黄色いわけではないが
報春鳥ほうしゅんちょうそろそろ変換が面倒になってくる頃
経読鳥きょうよみどり「法ーー法華経!」
愛宕鳥あたごどり初出不明
燈籠とうろう由来不明
花見鳥はなみどり梅見る少女じゃいられない
匂鳥においどり由来をしっかり調べたい
禁鳥とどめどり「きんちょう」と読めば捕獲飼育禁じられた鳥全般を指す
春の使はるのつかいそのままだが、「遣」の字の方がよいね
人来鳥ひとくどり「おや誰か来たな」と
耳目鳥みみめどり「耳目」は中国語から 意味は岡引?
晨鶯しんおう暁方に鳴く 中国
暁鶯ぎょうおう上に同じ
老鶯ろうおう晩春以降に鳴く 中国
残鶯ざんおう上に同じ

 鶯類としては世界で三百余種いるが、狭義に数種を鶯類とする場合もある。

 異名やら方言やら中国語やら当字やらが混ざると、同じ字に複数の意味を内蔵することはよくあるが、複数の字が全て同じものを指す場合、ひとつひとつ覚えるよりも纏めて一気に叩き込んだ方が効率がよい。咄嗟には読めなくても「あ。これはうぐいすのこと」と判るならばそれで回路が出来たことになる。それにどの字をとっても「熟字訓としての読み方はうぐいす」 と主張すれば通るのだから、恥とはならない。ホトトギスと混同するようであれば、この機会に覚えてしまおう。「法ー法華経!」は経読鳥のウグイスだ。梅に鶯法法華経。覚えたか?覚えたね?


鶯・婆 03/09/03

 鶯の異名は多々あるわけだが、あること・ものを指す言葉として「鶯」を当てていることも多い。

 甘菜を「うぐいす」と呼ぶのは摂州なり防州で、古く言う。
 魚を「うぐいす」と呼ぶのは浦戸あるいは串本で、古く言う。
 香の包紙を止める串を「鶯串」また「うぐいす」と呼ぶ。由来は諸説ある。
 「法法華経」と鳴くことから、法華宗の僧を指して言うこともある。
 美声の人を指して言う。「ウグイス嬢」ならよく聞く。
 掏摸師の間では、古く金や金時計を「うぐいす」と隠語。
 花柳界では、古く果物・野菜の隠語。
 盗人仲間ではまた隠語として梅干を指す。

 また鶯関連の表現も多い。

「ウグイス鳴かせたこともある」は、しなびた婆さんがその昔、男衆に次々言い寄られ騒がれていた様の表現であり、婆さん自身を梅の木、男衆を鶯に見立てたものである。その美声、印象、雰囲気から鶯は女性の属性かと思いたくもなるのだが、「ホーホケキョ」は雄が雌を呼ぶ鳴き声なので、孔雀の羽と目的は同じである。従って「ウグイス嬢」とは意味が微妙に複雑なのだが、それは気付かない振りをして、雌を求めて囀る鶯が止まる「梅の木」が若き婆さんであり、当時は人面梅花とも噂されていたのに今では花落ちて実も萎びて梅干婆となりました、そうあなたは笑っているけれど、これでも私ゃ若い頃はねえ、と昔物語が始まるわけだが、この「ウグイス鳴かせたこともある」という表現、歌舞伎の台詞にあり、また俗謡にも残っており、これは一般に言い交わされていた言葉を取り入れた結果の歌舞伎なのか、歌舞伎が切掛で一般に使うようになったのか、それを調べることが出来なかった。

「うぐいす音を入る」繁殖期を過ぎた晩夏に鶯が囀りを止めて地鳴きに戻ることの意であるが、この言葉を婆さんにぶつけるのは酷と言うものだ。中にはひねた残鶯もいたろうが、目白だか青い鳥だかの扱いをされた日には幾夜枕を濡らしても溶けない心を突然乗り越えて、ある時ついにただのおばはんに成り果てる。花の落ちた梅の木につくのは毛虫ぐらいだろうが、それも言わないほうがよい。

「うぐいすの落とし文」葉を巻いた中に何かの幼虫がいるわけだが、これは梅の木は関係がない。単に「落とし文」であったり「〜の落とし文」である中の「うぐいす」が表現として在ることは、鶯が囀りを止める頃にこの落とし文が散見されるからであろう。毛虫よりはオトシブミに来てほしかろうが、楢・橡・栗などの葉に行くのであって、梅の花に落とし文は届かないのだ。

「うぐいすのかいごの中の時鳥」かいごとは卵の意であり、なんとなく無理矢理五・七・五に断ち押し込めたようにも思える言葉だが、ホトトギスは雛を自分で育てず他の鳥の巣に置き捨てて育てさせることから「子でありながら子ではない」という意味となり、これは「コブ付きと一緒になった元梅木嬢」と解するよりも、「確かに自分の子であるが、実は旦那の子ではない」と解する方が楽しいかもしれない。健気な女房か、何も判っていない女房か、子悪魔的な女房か、好みはどれだ?ちなみに婆さんに聞いてみよう。「昔のことは忘れたね」さっき若い頃の自慢してたでしょうに。

 盗人仲間でうぐいすは「梅干」を指し、梅干婆はウグイス鳴かせたことがあり、その鳴き声は求愛であり、ウグイスとはまた美声のことを言い、だからウグイス嬢とは皆法華宗であり、特に純金を好み、やがて果物野菜のことを複雑な思いを込めてウグイスと呼び、そして今に至る婆さんの長い長いお話というわけだ。


鶯の 03/09/20

「鶯の〜」とつく言葉がある。

鶯の飯根「いいね」と読み、クマツヅラ科クサギ属、「臭木」の異名
鶯の木スイカズラ科スイカズラ属「鶯神楽」の異名
鶯の子そのまま鶯の子でもあるが、托卵されたホトトギスの子も指す
鶯の囀り舞楽「春鶯囀(しゅんのうでん)」の訓読み
鶯の笹鳴き舌鼓のような鳴き声
鶯の笹笛上に同じく
鶯の猿柿ゆり科しおで属「菝葜(さるとりいばら)」の異名
鶯関うぐいすのせき 寝屋川あたり
鶯の谷渡り1.谷から谷へと鳴きながら渡ること
2.曲芸などで乗り移りのこと
3.ホーホケキョケキョケキョケキョケキョ
鶯の付子鶯の雄の雛を成鳥や笛によって鳴き声を学習させること
鶯の初音その年最初の「ホーホケキョ」
鶯の初音膾鮎のなますの異称 節分の夜に食べたらしい

 「鶯の巣」や「鶯の羽」はそのままなので省いた。笹鳴きはまた地鳴きとも呼び、「チャッチャッ」と聞こえる。「ホーホケキョ」は繁殖期に雌を恋う鳴き方である。そして初鳴きを初音と呼ぶ。初音膾は詳しくは判らない。鶯関は今の寝屋川市のどこからしい。「春鶯囀」は「しゅんのうでん」と読めば舞楽を指すが、「しゅんのうてん」と読めば日本酒の銘柄になる。

 ところでふつふつと湧いてくる疑問がひとつ。鶯類、狭義では限られた数種だが、広義の鶯類は世界中にいる。異国の鶯がどう鳴くのかにも興味があるが、もし「ホーホケキョ」と鳴くならば、異国の人の耳にどう聞こえていてどう表記しているのかが気になるのだ。今まで殆ど果たしたことのない宿題とする。

 小学生の頃、田舎という程でもないが家の前には田圃があり、小学校の裏には山があった。絶好の遊び場で、鶯の鳴き声をよく聞きに行った。風流心からではない。当歳の鶯がまだ鳴き方を心得ておらずにあれこれ試し鳴きしているところに気配を殺して近付き座り込んで、へたくそな鳴き声を笑うことが目的であった。最初のうちは「ホ〜〜・・・・・・」息を詰めて待っていても「ケキョ」がなく、笑いをこらえるのが大変である。少しすると「ホ〜〜ホケッ・・・」これは何度聞いても噴出してしまうのであって、しかし笑い声を立ててしまうと驚いて飛び去ってしまうのだが、子供心には「驚いて飛び去った」ではなく「笑われて恥ずかしいから逃げた」と考える方が自然に思われた。慣らし運転が終わると飛ばしたくなるのは人の常なるところであるが、鶯もまた鳴き方のコツを掴んだ頃には「ホーホケキョケキョケキョケキョケキョケキョ、ケッ」と大いに鳴き飛ばす。しかしそれでは雌に相手をされないのかどうか、段々皆普通に「ホーホケキョ」と鳴くようになり、やがてそれが聞かれなくなり地鳴きに戻る頃、蝉が鳴き始めて夏がやってくる。


鶯が冠詞 03/09/29

「鶯」が頭に付く言葉がまた山のようにあって、実はここからが本編だ。

鶯合うぐいすあわせ手飼いの鶯を持ち寄り、声の優劣を競う遊戯。「鳴き合わせ」「鶯会」とも言う。
鶯色うぐいすいろまた鶯茶とも言う。褐色がかった黄緑色。また鶸茶とも言う。
鶯会うぐいすかい鶯合に同じ。
鶯飼うぐいすかい鶯を飼うこと。また、鶯を飼っている者を指す。
鶯貝うぐいすがいウグイスガイ科の二枚貝。約八センチ。
鶯垣うぐいすがき柴垣の一種で目を密に編んだ竹などの垣。
鶯神楽うぐいすかぐら北海道南部から本州に自生する落葉低木。庭木ともする。
鶯隠うぐいすがくれ鶯神楽の異名。
鶯賭うぐいすかけ鶯を使う賭博。京都地方で行われた。
鶯籠うぐいすかご鶯を飼う籠。
鶯葛うぐいすかづら鶯神楽の異名。

 「鶯の」でも出たが、「鶯神楽」という木は異名が「鶯木」「鶯隠」「鶯葛」と色々あることは、昔から身近な木であった事を示している。また、岐阜の恵那、三重の度会あたりでは鶯神楽を方言で「うぐいすぐみ」「うぐいすごみ」とも言うらしい。肝心の鶯神楽がどんな木かと言えば、高さはおよそ1〜1.5m、スイカズラ科スイカズラ属の落葉低木で、楕円形の葉、若葉に限って縁が暗紅紫色。春に淡紅色で漏斗状の花が細長い柄で垂れ下がって咲く。実は楕円形をしており、熟すと鮮紅色となり、食べることが出来る。食べた事がないから次の春には口の周りと舌を真っ赤に染めてみたいものだ。

 鶯貝は表面が赤褐色で、内面に真珠光沢を帯び、房総以南の沿岸に分布する。形が鶯に似ていることから名付けられたようだ。

 鶯賭とは、締め切った大広間の中央に梅の盆栽を置き、周囲等距離の位置から鶯を放して、最初に梅の枝に止まった鶯の飼主の勝ちとする優雅といえば優雅、風雅のいえば風雅、つまりは金と暇を持て余した者のする遊びなのだろう。賭博とは本来そういうものだが、金も暇もないのにのめり込む者が多々いるということは、それだけ暇過ぎて生み出された面白すぎる遊びということか。大尽の遊びとなってしまうと一気に劣なる精神が侵食してきて風雅を気取るだけのものとなってしまい、今では貴族でもなく大尽でもない一部の好事家により「保存会」のような形で残っていることだろう。

 しかし鶯同士喧嘩したりしないのかね。入り混じって「自分の鶯はこれだ!」と自信を持って言えるのかね。最も興を削ぐのは、梅の盆栽に餌を仕掛けておいて、離した瞬間一直線に飛んでゆくよう仕込まれた面白味のない鶯であって、そういう所は下種なる飼主ともども見たくもないと思いませんか。やはり一斉に放した瞬間、鶯は一様に「はへ?」と途方に暮れてみたり、誰かの肩に止まってみたり、とりあえず疲れるまで部屋の中をぐるぐる飛んでみたり、茶菓子を啄ばんでみたり、水を飲んだり、雌を恋うてみたり、畳の目の中まで糞が染み込んだりするところを「ほっほっほ」と笑いながら半刻も過ぎようかという頃にやっと止まる奴がいて、「む」なとど唸ってみた後おもむろに袱紗包の金が遣り取りされて、さて一息ついたところで捕まえるために一騒ぎ、これならば優雅・風雅と認めよう。


鶯の冠詞 03/10/12

 鶯の冠詞を持つ言葉、第二弾。鶯テーマは通算五本目。よろしくお付き合いの程を。

鶯蛙うぐいすかわず狂言の一。
鶯羹うぐいすかん鶯色の羊羹。
鶯串うぐいすぐし香の包紙を止める金属性の串。
うぐいすぐみ「鶯神楽」の、古く岐阜は恵那地方の方言。
鶯籠うぐいすこ鶯籠(うぐいすかご)に同じ。
鶯香うぐいすこう組香の一。
鶯声うぐいすごえ美しい声音。滑らかな舌。口巧者。
鶯独楽うぐいすごま唸り独楽の一。
うぐいすごみ「鶯神楽」の、古く三重は度会地方の方言。
鶯衣うぐいすごろも袂を作らない衣。また別に袖付の脇を綻ばせた衣。

 「鶯羹」とは、挽茶を混ぜた練り羊羹で、その色から名付けられた。紅くすれば紅羊羹になる。「鶯串」の語源は諸説あり正確には不明。「鶯香」の組香とは、何種類かの香を焚き、その焚いた順番なりを当てる遊戯。茶会に似ているが、こちらは遊び心が強い。「鶯独楽」は鶯の鳴き声のような音を立てるそうだが、一度聞いてみたいものだ。「鶯衣」とは、「鶯袖」と同じ意。近世初頭に流行したらしい若い男女の着る衣服の袖が、袖付とは、まあ肩の付根の合わせる所だが、これを全て縫い付けてしまって袂を作らない衣を指すとも言い、また袖付の脇を綻ばせた衣とも言うらしい。早い話がよく判らないのであって、ここに「辞書の記述が長ければ長いほど執筆者も判っていないし読んだ者はもっと判らない」典型的な例がある。

 「鶯声」は必ずしも男か女かに限定してしまうわけではなく、その声自体の美しさ麗しさを形容しているのであるから、どちらに使ってもよい。しかしながら近年の趨勢としては野球場、選挙車に於ける鶯嬢の印象が強すぎて、「鶯=美声=女」と結び付けられてしまう事は避けられない。野球場の鶯嬢と言えば、やはりプロ野球よりも君付けの高校野球の方が鶯嬢らしく思えるのは何故だろうか。

 そして選挙車の場合。これは「うるさい」以外の感興はなく、従って鶯嬢と呼ぶには抵抗がある。何かの選挙の真っ最中、別々の候補者の本人を乗せていない選挙車がすれ違う場合、近付くにつれて公約も政策も落ち着きも体面も全て吹っ飛び、宣伝嬢同士の勝負が始まる。「民衆党の壱岐益男でございます」「人民党の鈴口鉄太郎でごさいます」「壱岐ですありがとうございます」「鈴口ですよろしくおねがいします」「壱岐です壱岐です壱岐でございます」「鈴口です鈴口です鈴口でございます」ただ張り合ってひたすら高い声を出した方の勝ちらしい戦いは、周囲の迷惑をものともせず次第に盛り上がってゆく。すれ違う一瞬を最高潮として、離れるにつれて大人しくなる。このような品のない騒ぎを鶯と形容するのは鶯に対する侮辱であるから鶯嬢ではなく、宣伝嬢と呼ぶ。

 しかしその戦いが当然だと思っていた中、一度だけ面白いことがあった。それぞれ対立候補の選挙車がすれ違う方向に進んでいたので、「ああうるさくなるな」と覚悟を決めたところ、向こうから来た選挙車の宣伝嬢が息を継いだ瞬間に、こちらから行く宣伝嬢がすかさず「民衆党の壱岐候補の御健闘をお祈りします」と相手の党名と名前を呼んでエールを送ったのだ。これを普通の声調でさらりと言ったから辺りの人は皆驚いて振り向いた。当然エールにはエールを返すことが仁義であるから返すだろうと期待したわけだが、残念なことに「・・・健闘を・・・」あたりですれ違ってしまい、すれ違ってお祈りされた後、エールを送った方の選挙車の真後ろに巨大なトラックがおり、エールを返そうとした宣伝嬢はトラックで相手の名前が見えないものだから「ありがとうございます・・・ご声援ありがとうございます・・・こちらこそお祈りしております」当然エールを送った宣伝嬢はお返しを待って沈黙していたのであって、大変気まずい雰囲気を通行人の間に残してそれぞれ去っていった。

 宣伝嬢同士の戦いは、明らかにエールを送った側の勝ちであり、本人同士もそれを判っているだろうし、通行人も皆それを判っている。しかし勝った宣伝嬢側の候補者名がトラックの向こうに判らないまま去ってしまったことで、負けた宣伝嬢の候補者名は頭に残った。情けなさに腰が砕けたわけだが、結局エールを送った側の候補者が当選したので、よい気分にはなった。


鶯は冠詞 03/10/21

鶯の冠詞第三弾、結構続いてしまう。例によって日本国語大辞典を参考にした。

鶯竿うぐいすざお軸物をかける為に用いる竿。
鶯砂うぐいすずな輝石の破片を多量に含む緑灰色の砂。
鶯草うぐいすそう「瑠璃草」の異名。
鶯袖うぐいすそで鶯衣に同じ。
鶯染うぐいすぞめ鶯茶の色に染めること。染めたもの。
鶯茸うぐいすたけ食用きのこ。
鶯谷うぐいすだに東京都台東区。鶯谷駅周辺。
鶯谷うぐいすだに盗人の隠語で門構えのある家を指す。
鶯茶うぐいすちゃ鶯の背に似た褐色がかった黄緑色。

 「鶯竿」はまた別名「かけものかけ」とも呼ぶ。「鶯砂」は、小笠原諸島に産する砂、壁を塗る際に用いられる。砂丘の、足を踏みしめると音の出る「鳴砂」と勘違いしてしまった。「鶯袖」は前回の「鶯の冠詞」の中で「鶯衣」として解説したので重複は避ける。「鶯染」はそのままだ。「鶯茸」と呼ばれるきのこは二種類ある。梅雨の頃から秋まで各地の森林や竹林などの陰湿な場所に発生する担子菌類のきのこ。かさの直径は三センチ前後。表面は赤く裏面と柄は白い。もろく腐敗しやすい。別名を「子紅茸」「彼岸茸」とも言う。もうひとつはカワリハツの緑色型で、かさの直径が八センチ前後、色は紫・牡丹色・オリーブ色など変化に富む。正直に白状するが、さっぱり判らん。「鶯谷」の地名の方は御存知山手線にある駅で、かつてこの周辺は鶯の名所として知られ、名だたる文人が居を構えた。隠語の「鶯谷」の由来は不明。「鶯茶」はまた「鶯色」「鶸茶」とも呼ばれる。確かにこの涼しげな色は魅力的だ。(#708C50鶯色とはこんな色)

 鶯と言えば「ホーホケキョ」の鳴声であるが、何故鶯はこのような鳴き方をするようになったのだろうか。どう考えても不自然なほど洗練されている。日本全国に分布する以上、何百年間も人の手が介されているとは考え難い。しかしながら完全に野生の鶯であっても、飼われている鶯であってもその鳴声が聞こえた瞬間は、まず風流と感じるより先に「どこかでテープを流しているのではないか」と考えてしまう程綺麗な鳴声であるから俄には信じ難いのである。

 鸚鵡に鶯の鳴声を学習させると理論上は一年中「ホーホケキョ」が聞けることになる。しかし油断するとドアの開閉音を覚えてしまったり救急車のサイレンを覚えてしまったりする。デパートの屋上にはよくペットショップがあり、そして大抵鸚鵡が客寄せに採用されいる。この可哀想な鸚鵡は鶯の鳴声やら挨拶やら童謡などは覚えさせてもらえず、「バカ」「アホ」「ウンコ」「ナンデヤネン」などと悪戯の対象になる。ならなくてもペットショップであるから子犬の鳴声を習得してしまったりする。せめてもの救いは「イラッシャイマセー」「アリガトウゴザイマシター」を覚えている事だ。

 手前はかつて鸚鵡に悪戯を仕掛けたことがある。人が驚く言葉を覚えさせようと企んだのだ。それは早口言葉の「バスガス爆発」であった。そしてこの試みは無謀であった。ゆっくりなら言えるが、当然ゆっくり言えば鸚鵡もゆっくり覚えてしまう。だから精一杯早口で「バスガスはつはつ」「がすばすがすはつ」「ばすがすばがつはつ」かなりの時間粘っていたら店員さんが寄って来て笑顔で「覚えましたか?」「無理です・・・言えないです」結局のところ早口言葉を鳴く鸚鵡は完成せず、敗北感に包まれて家路についた。


鶯も冠詞 03/11/05

では鶯。参考は日本国語大辞典。

鶯塚うぐいすづか歌舞伎の題 「昔話黄鳥墳」
鶯塚古墳うぐいすづかこふん奈良若草山山頂にある古墳
鶯爪うぐいすつめ干し海老の一種
鶯徳利うぐいすとくり酒を注ぐ際に鳴声に似た音が出る
鶯綴うぐいすとぢ冊子の綴じ方の一種
鶯菜うぐいすな小松菜などの菜っ葉の称
鶯鳴合うぐいすなきあわせ「鶯合うぐいすあわせ」に同じ
鶯菜飯うぐいすなめし鶯菜を蒸して細かく刻んで炊き込む
鶯糠うぐいすぬか鶯の糞を混ぜて精製した化粧用の糠

 「昔話黄鳥墳(むかしがたりかうぐいすづか)」とは、鶯を狂言回しに用いた敵討ち物語。鶯塚古墳は前方後円墳で清少納言「枕草子」の鶯塚記念碑がある。「鶯綴」とはまず一帖のうち一枚の紙を二つ折りにして穴を開け、元に重ねて錐でその穴にあわせて全部を通して綴じる。鶯菜とは、小松菜・油菜・蕪などの菜っ葉を称するもので、春に三寸ほど伸びたものを摘んで菜とするもの。特に小松菜を指すことが多い。鶯が鳴く時期に色も似ていることから言う。「鶯鳴合」は飼育している鶯を持ち寄ってその鳴声を比べる「鳴合」に同じ。

 「鶯糠」は鶯の糞を化粧品の原料とするもので、その話は聞いたことがあるのだが、実は大きく誤解していた。鶯の糞を乾燥させて粉にし、それを水に溶いて絵の具のようになったところを顔に塗りたくるとばかり思っていた。乾いてばりばり剥がれたら肌に何かの吉事ありとするのではないかと考えていたのだ。しかしつくづく疑問であったのは「糞を、何故鶯に限るのか」であった。時鳥の糞では駄目なのか。鳩の糞では駄目なのか。鴉の糞では駄目なのか。そもそも糞を顔に塗りたくるにあたっては心理的葛藤などがないのだろうか。

 概して鳥の糞はまず見た目が汚い。白くべっとり拡がったペンキ様の央にモンブランの麺の切れ端が鎮座している。落下高度が高ければ高いほど衝撃でだらしなく拡がっている。あの白い部分なのだろうか。実の方だろうか。両方混ぜたものだろうか。いずれにしてもあんなものを顔に塗りたくると荒れないか普通?

 これが誤解であったことはまずめでたい。糠を化粧に使うことも知ってはいたが、そこに混ぜ込むのであれば、混ぜるということはつまり主成分が糠であって、糞はあくまでも「隠し味」であるのだから、心理的抵抗も副作用もあるまい。

 しかしそれでもなお「鶯に限る理由とは」の疑問が頭から離れないのであって、これはやはり単なるプラシーボ効果なのかもしれないね。


鶯を冠詞 03/11/13

鶯、とりあえず最終回となる。日本国語大辞典を参考にした。

鶯飲うぐいすのみ早呑み競争の方法のひとつ
鶯張うぐいすばり木張りの床が鳴る
うぐいすばる「小峰楓」の加賀地方方言
鶯笛うぐいすぶえ鶯の鳴き声に似た音を出す笛
うぐいすぼく「鶯神楽」の異名 鶯木?
鶯巻うぐいすまき挽茶を入れた巻き煎餅
鶯豆うぐいすまめ青豌豆を柔らかく甘く煮たもの
鶯眉うぐいすまゆ江戸の頃の眉の化粧法
鶯餅うぐいすもち両端を摘んで形を似せた餅。色も同じ。
鶯類うぐいするいスズメ目ヒタキ科ウグイス亜科一門衆

 「鶯張」は板がかしいで鳴るのかの思っていたが、床板を留めた鎹がきしって鳴るらしい。古くなって勝手に鳴るようになったわけではなくて、あくまでも音を出すことを目的として縄張りしたことになる。「小峰楓」とはカエデ科ウリハダカエデ属、頭の中に浮かぶ楓とは少し違う。暇なら検索すべし。「鶯笛」とは、竹などで作った笛であり、元々は鶯の声の訓練に使用していたが、次第に子供のおもちゃとなって、笛の先っちょに鶯の飾りまで付いたりした。これはどこかの観光地土産屋で必ず見た事がある筈だ。それにしても観光地の耳掻きは何故必ず耳糞が付いているのだろうか。「鶯神楽」はもういいだろう。「鶯巻」「鶯餅」ともにその色から鶯の名が冠された。「鶯眉」はその指す対象がふたつある。ひとつは生まれたばかりの女児の額の生え際に白粉で書いた筋、眉を作らない化粧を言う。江戸中期以降は鴎型の線を眉が伸びるまでの間書いた。もうひとつは同じく江戸時代、奥女中が十六・七歳から眉を細く剃って捏墨で書いた細線のこと。置眉に一種で別名「やなぎまゆ」「いとまゆ」など。

 そして「鶯飲」だ。これは各自盃十個に酒を注いで五個づつ二組に分け、梅の花の形に並べてそれを全て早く飲み終えたほうが勝ちとするものだ。一気飲みをおちょぼ口でぴいぴい非難する阿呆はこの言葉絶対に知らんのだろうな。伝統文化に弓引いてることになるからな。つまりこの形式、盃を幾つも並べて酒を注いでおいて一気に飲むやり方、現在では他人との勝負というよりも自らに対する挑戦と少しばかりの主役意識をちくちく刺激して実施されることが多い。なお現在では「ドレミ一気」と呼ばれている。

 方法はドレミファソラシドの八つの音に合わせてコップを八個並べる。音階が上がるにつれて注がれているビールの量も増えてゆくといった寸法だ。最後に加速する為に段々少なくするやり方もある。いずれにしてもそのままならばグラスハープの準備と紛うところを残念ながら風流とは対極の道を行くバンカラ的雰囲気の大学生は、これをドレミの歌に合わせて次々飲み干すことになっている。皆が手拍子と声を合わせてドレミの歌を歌う中、最初のドは約一センチ、レは約二センチと増えてゆく。歌っている方は段々盛り上がる。盛り上がるとテンポが速まる。しかしテンポが速まるのに干すべきビールの量は増えてゆく。飲み慣れないうちは苦行なのだが、慣れてくると当然のように様々な変種が編み出される。歌はきちんと下のドから始まるのに並んでいるコップ全てが高いドの量注がれていたりする。

 最も厳しかったのはこのドレミ一気を実行中、次々干したコップに次々ビールが再装填されていた時だ。まだソのあたりで既に干した筈のミのコッブに泡が立っている。これはいつまで経っても終わらないのであって、つまり皆は手前がその場で逆噴射することを期待していたわけで、結局約二巡半ほどで卓上の瓶ビール全て空き、そのままよたよた便所に走り込んで飲んだばかりのビールを吐いた。鼻水が出てきたのは風邪をひいていたからではなく、涙が出てきたのは泣いていたからではなく、つまり勢い余ったビールが鼻腔を通って鼻と目から滲み出ただけの話だ。


鶯小ネタ集 04/04/13

鶯小ネタ集だ。

○鶯の学名は「Cettia diphone」、英語で「(Japanese) Bush-Warbler」、「Warbler」だけならウグイス科の鳴鳥あるいは歌う人の意味になる。warbleは囀るの意味だから、甲子園などの鶯嬢は、Warblerと呼ばれると考えてよいのか?

○鶯と名の付く酒。
「庭の鶯」純米原酒山口酒造 福岡 (ほか季節限定「春のうぐいす」「秋のうぐいす」など)
「豊の梅 鶯寿」大吟醸原酒高木酒造  高知
「豊の梅 楽鶯」普通酒高木酒造  高知 どろめ祭りで使われる酒。
「鶯宿梅」純米大吟醸三和酒造  静岡 古酒もあり。
「春鶯囀」純米萬屋醸造 山形 (もと一力正宗)
「梅乃宿の梅酒 鶯梅」梅酒梅乃宿酒造  奈良 日本酒ベースの梅酒。
「流鶯」焼酎万膳酒造  鹿児島 薩摩芋焼酎

○鶯の糞を化粧として、他の鳥の糞を化粧としない理由があったのだ。
 鶯は雑食性であり、その糞には何やらいう漂白作用があって、太夫や歌舞伎役者が白粉焼けで黒くなった肌に使っていたことから、鶯の糞が化粧材として使われたということだ。これは肌の手入れ・漂白なのだから化粧と呼ぶのが適切なのか不明だが、おおよその経緯はわかった。穀物だけを食べる鳥は蛋白質や脂肪の分解酵素がないので漂白作用はないことも知った。
 鶯に拘るには根拠があったことになる。ただし、同様に雑食性であり同様に糞に漂白作用を持つ鴉・犬・猫・人の糞を顔に塗らない根拠は依然不明のままだ。


法吉 04/03/04

 鶯についての記述があったから何となく読んでいたら、鶯の別名「人来鳥」は鳴声の「ピートク」語源説を見つけた。

 次いで「ホーホケキョ」と表記するようになったのは割に新しく、遡って江戸あたり、それ以前は鳴き方が同じでも表記が違ったらしい。今に近いのは「ホホキ」で、これは出雲国風土記に出ているとあったから調べた。嶋根郡の中に法吉郷(ほほきのさと)が見える。

「法吉郷  郡家正西 十四里二百卅歩 神魂命御子 宇武加比賣命 法吉鳥化而飛度 靜坐此處 故云法吉」

「法吉郷 郡家の正に(丁度)西 十四里二百三十歩 神魂命の御子 宇武加比賣命が 法吉鳥と化して飛び渡り 此処に静まり坐す 故法吉と云う」

 こんな感じだろうか。距離はよく判らないが、「卅」の意味が「三十」で「ソウ」と読むことはどうにか調べた。「十がみっつ」らしい。似た字で完全に別字の草がある。「歩」の字は古い方の字、つまり下の「少」の右の点がない「崩れた片仮名のツ」みたいな字で、あとはまあ、ほぼそのまま。神名などの読み方は変遷と方言が入り混じって何が正しいとは言えず、漢字が正しくて聞いて直ぐ判ればよいのであって「神魂」は「かみむすび」「かむむすび」「かんむすび」「かむすび」「かむす」「かもす」どれが好き?「うむがいひめのみこと」は神格化された蛤の神とか。ここに出てくる「法吉鳥」が「ほほきどり」で鶯のことらしい。出雲国風土記の成立は733年で、その頃既に「法吉鳥」と呼ばれていたならば、大層古い話ではないか。それで少し興味が湧いて調べてみると、「ほほき」は「ほおき」「ほうき」とも呼ばれていた可能性もあるという。

 では「伯耆」との関連は?

 これが凄かった。何しろ全然判らない。まず「伯耆」の語源がはっきりしていればそれで話は終わって楽になる。しかし楽にはならなかった。稲田姫が例のヤマタノオロチから逃げた時、逃げ遅れた母に対して「母来ませ」以降「母来」から「伯耆」になったとあるが、これは後世の創作であるとして、結局語源には辿り着けない。角川の県別地名辞典を見ても載っていない。地名辞典幾種か見ても「伯耆の語源はこれ」とはない。寄道して京都で二箇所、秋田と福島の計四箇所で「伯耆」の地名を見つけた。

 では別の角度として地図から攻めてみた。まず「法吉郷」はどこか。そして「伯耆」との関連性は。法吉郷は現在の松江市の西に法吉町(ほっきちょう)が残っている。ここはこれでよい。

 「伯耆」はどうなのだ。現在の鳥取県の成り立ちまで引っ繰り返したが、意味はなかった。「伯耆」の成立はいつなのだ。712成立の古事記には「イザナミ(嫁の方)を出雲と伯伎の境の比婆山に墓云々」とある。ここに「伯伎」が出ている。違うようだ。で、なんとなく気勢を殺がれてそれでも古事記関連書を見ていたら伯岐国造は出雲系云々とあり、まあ引っ張ったのどうのというあれだが、古事記自体が信頼性に欠けるとしても、語源の不明は確かなようだ。

 伯耆の語源がもし鶯ならば風流な話だと思ったり思わなかったりして、今日の迷路は楽しい割に収穫が少なかった。




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