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都都逸崩れ
現実
あなたにとって
サキャ・217
助言は箴言
弄ぶ
優しい人
年歳
四季節々
おはよう
紙一重
ハリマルマツリ
電網落書
見立て弄ぶ
五尺五寸
風林火山
消える客
梟の引越
不鼎立
電網落書・甲申



「どうして創造欲とか創作欲が湧くんだろう?」

「それだけ暇なんだろうさ」

都都逸崩れ 03/05/07

不意に泪が零れ落ちた時 貴女に傍にいて欲しい

怖い夢見て跳ね起きた時 貴女に隣にいて欲しい

貴女が降らせたこの雨に溺れた私の心は沈む

優しくすればつけ上がり 冷たくすれば逆恨み

お金を目当てに結婚してからお金を目当てに離婚する

別人以上の化粧で現れ 「私のことを忘れたの?」

その場凌ぎの奇麗事 あとで必ず揉める種

「素直に言ってよ」「別れたい」「嫌よ」それでは一体どうしろと

「本音聞かせて」「今すぐやりたい」「それは本能」その通り

「我儘やめて」気づいてないかもしれないけれどそれはいつものこちらの台詞

騙したつもりで騙されたふり 最後はいつもわけがわからん


現実 03/06/05

暇がある時 金がない
金がある時 暇がない

金がある時 愛がない
愛がある時 金がない

愛がある時 暇がない
暇がある時 愛がない

愛と暇がある時 金がない

暇と金がある時 愛がない

金と愛がある時 暇がない

そして

暇と金と愛がある時はない


あなたにとって 03/06/07

「あなたにとって○○とは何ですか?」

 この問いかけ、寺山修司氏が産み出し、悪評の多いまま定着してしまったわけだが、これをかわす答え方がひとつある。こう答えるのだ。

「○○とは人生のようなものです」

 何を訊かれてもよい。とにかく「人生です」「人生そのものです」「人生のようなものです」と答えておけば必ず形になる。やってみようか。

「あなたにとって麻雀とは何ですか?」「人生のようなものです」「何故ですか?」「上手くいく時といかない時があるから」

「あなたにとって禁煙パイポとは何ですか?」「人生のようなものです」「何故ですか?」「味があるから」

「あなたにとって眉毛とは何ですか?」「人生のようなものです」「何故ですか?」「絶対に思い通りにならないから」

「あなたにとってエリスロポイエチレンとは何ですか?」「人生のようなものです」「何故ですか?」「よくわからないから」

「あなたにとって変換ミスとは何ですか?」「人生のようなものです」「何故ですか?」「誰しも間違いはあるから」

「あなたにとって整備不良とは何ですか?」「人生のようなものです」「何故ですか?」「壊れてるから」

「あなたにとって鼻血とは何ですか?」「人生のようなものです」「何故ですか?」「自分で止められないときがあるから」

「あなたにとって電話帳とは何ですか?」「人生のようなものです」「何故ですか?」「無駄が多いから」

「あなたにとって核兵器とは何ですか?」「人生のようなものです」「何故ですか?」「どうにもならないから」

「あなたにとって宗教とは何ですか?」「人生のようなものです」「何故ですか?」「神頼みだから」

「あなたにとって轢かれた傘とは何ですか?」「人生のようなものです」「何故ですか?」「筋が通ってないから」

「あなたにとって信号無視とは何ですか?」「人生のようなものです」「何故ですか?」「自己責任だから」

「あなたにとってガードレールとは何ですか?」「人生のようなものです」「何故ですか?」「いつの間にか汚れてるから」

「あなたにとってハシバミ色とは何ですか?」「人生のようなものです」「何故ですか?」「縁がないから」

「あなたにとって」もうやめよう。きりがないし、飽きた。とにかく、機械的に「人生のようなものです」と答えておいて、その後理由を訊かれたら相手が問い掛けた物をそのまま無心で形容すればよい。後は勝手に理解か誤解をしてくれる。

 ただし当然罠がある。

「あなたにとって人生とは何ですか?」

 これは困る。全てを人生に喩えるわけだから、人生とは何か、喩えようがない。仕方がないのでこう答えてみる。

「人生とは・・・やっぱり人生そのものです」

 何か気の利いた台詞はないものか。


サキャ・217 03/06/26

 雀が夕方道に迷って飛んでいた時
 コウモリが塒へ導いたので
 雀は仲間の元へ帰ることができた

 鳩の巣に蛇が近付いた時
 コウモリが鷹を呼んだので
 蛇は鷹に襲われ鳩の巣は無事だった

 鴉が翼を折って苦しんでいた時
 コウモリが餌を運んで看病に努めたので
 鴉はやがてまた飛べるようになった

 鴛が夫婦喧嘩をしている時
 コウモリが巣を壊したので
 巣を修理するうち鴛は元の仲に戻った

 燕が雨の日に餌を探している時
 コウモリが森の中の蚊柱に案内したので
 燕は雛を餓えさせずにすんだ

 鷹が老いた時
 コウモリが他の鷹を呼び集めたので
 老いた鷹は仲間に看取られ幸せに死んだ

 あるときあらゆる鳥が集まって羽を一枚づつ出し合い
 不死鳥を作って鳥族の守り神として崇めようとした

 しかしコウモリは羽を差し出すことができなくて
 すべての鳥から蔑まれ捨てられた

------

「内にあらゆる功徳があっても
 外観が悪ければ見下げられる
 コウモリは賢くても毛がないので
 すべての鳥から捨てられた、と言われる」

 サキャ「サキャ格言集」岩波文庫 今枝由郎訳
  217番 故事未詳

 を元に構成しました。


助言は箴言 03/07/11

 誠意溢れる助言と悪意溢れる箴言は表裏一体だ。


「世の中悪いことばかりじゃないさ」 → 「悪いことは立て続けに起こる」

「厄払いでもするか?」 → 「この世はババ抜きだ」

「運が悪かっただけだよ」 → 「運とはあてにならないものだ」

「誰でもたまには失敗ぐらいするさ」 → 「失敗は狙い澄ましてやってくる」

「さあ、一から出直しだ」 → 「命はあっても人生は終わっている」

「落ちるところまで落ちた。後は上がるだけだ」 → 「合理的。ものは言い様だ」

「まあ、あいつの言うことも正しいと思うけど」 → 「世は真理に満ちている」

「君の言うことは尤もだ」 → 「君がそう思い込んでいるだけだ」

「項羽と劉邦を知っているか?」 → 「負けつづけるか、最後に負けるか、どちらを選ぶ?」

「君には才能がある」 → 「才能はある。しかし才能しかない」

「一本気なところはいいんだけどね」 → 「妥協をしない、妥協を知らない、さあ、どちらを選ぶ?」

「いつまでも悩むなよ」 → 「諦めることを覚えろ」

「時が経てば解決するさ」 → 「どうにもならないときがある」

「ここが勝負だ。一気にいこう」 → 「悲惨な人生とより悲惨な人生、たいして変わりはない」

「次はいいことあるさ」 → 「助言を当てにしてはならない」


 誠意溢れる助言と悪意溢れる箴言は表裏一体だ。


弄ぶ 03/08/22

「カスほめはカス以下」

 眠りに落ちる寸前辛うじて記したらしきメモの判読に成功して上を復元したわけだが勿論これはただの原型であって、これに肉付けしてゆきコラムにするか、そのまま戯言に流用するかはひとえに気力次第なのだが、気力が全然なければ没ネタとして供養することになる。没ネタはこのところ続けたものだから遠慮があり、しかしながら題材を探して肉付けする気力もなく、ここは戯言の弄び方で誤魔化そうと思う。

 眠る直前に書き留めたものであるからこれは当然そのままでは使えない。「最初の直感を大切に!」とはよく言うことだが、文章の場合は磨き方さえ間違えなければ形になるのであって、一気に書いた文章が添削なしで通用する力量があるならば弁論家になればよいだけであり、声に出す言葉では伝えきれないことを伝えようとするから文章を使う。開化以来同音意義語が増えて後益々書き言葉として発達した日本語は今停滞しているが、そのもどかしさをも含めて言葉に尽くす。

 いくら片仮名が嫌いであっても眠る直前に「滓」などという字を書いてはいられないから「カス」なのだが、戯言として整える場合には漢字に直す。「ほめ」も漢字にする。

「滓を褒めるのは滓以下だ」  妙にバランスが悪いのだが、「ほめる」の字は「誉」より「褒」が好みなのでこれはどうしようもない。「滓」ではなく「屑」にしてみようか。

「屑を褒めるのは屑以下だ」  まだ滓の方がましに思える。リズムがない。リズムが「悪い」のではなくて、「ない」。平板であるから後半を転がしてみる。

「屑を褒めるのは屑以下であることを表明している」  その通り、と納得するだけで後に何も残らないのでこれは却下される。しかし多少リズムがましになったのでこれをさらに転がす。

「屑を褒めるのは屑以下であることを証明している」  文法的にややおかしいので、おやと少し躓いて「ま、そやな」と納得するが、まだ甘さがある。

「屑を褒めることは屑以下であることを証明しているのだ」  「こと」「のだ」を足しただけで再びリズムが失われてしまった。間延びしている。納得どころか右から左へただ通過するだけの、正に「屑」と呼ぶに相応しいものになってしまった。

「屑を褒めることは屑以下であることを証明している」  「のだ」を削ると少し復活したようにも見えるが、「証明している」より前が長過ぎてまだ掴み所のないままだ。それから「証明」で固定してしまってよいのか。「褒めること」「以下であること」こんな短い文に「こと」はふたつも必要ない。

「屑を褒めることは屑以下だと言明している」  「明」の呪縛に罹っているらしい。よくあることだが、腹立たしい。それにこれもまたリズムが消失している。「だと言明している」が元凶だ。これがもし文章の中の一節ならば「・・・屑を褒めることは、すなわち君が屑以下であると言明していることになるね。・・・」と適当に飾って埋め込むことも出来るが、ここの一節だけでどうにかする為には、まだ転がさねばならない。まずは「明」から逃れよう。

「屑を褒めることは屑以下であると自慢していることになる」  長くて説明的過ぎる。「以下であると」が後段の幅を狭めているので、「以下であることを」にしたいから「褒めること」を変えてみよう。

「屑を褒め称えるのは屑以下であることを示している」   弱くなった。これならば「カスを褒めるのはカス以下だ」の方が力はある。「示している」が弱い。精一杯の悪意を込めたいのにこれでは腰が砕けている。「屑を褒める奴は屑以下なんだぼけなす」これを御上品にしたいのだ。それより「屑」でいいだろうか。「滓」の軽さと「屑」の濁りとどちらにより深い悪意を感じるだろうか。

「屑を褒め称えるのは屑以下のすること」   「すること」が弱い。ここに漢字を嵌めてリズムを取りつつ見た目のバランスも取りたい。

「屑を褒め称えるのは屑以下との証明」   一行情報になってしまった。しかも「明」が戻っている。これだけ「明」の呪いが厳ければ、もう抵抗しない方がいいのだろう。しかし、いっそそこを削るか。

「屑を褒め称えるのは屑以下」   少し重く、リズムがない上に放り出したような感がある。「褒め称える」が悪いのか。

「屑礼賛は屑以下の証明だ」   これを暫定とする。

 まあ、このようにして頭の中で言葉を弄んでみて、候補だけを書いては消し書いては消してどうにもぴたりと決まらない時は、己の語彙の貧困さを改めて悟り、更に辞書を読み、更に言葉を弄び、更に落ち込み、実のところキリがなく、そして何故かそれが不思議に楽しい。


優しい人 03/08/31

「怒らないで」で
 怒るのが怖い人
 怒らないのが優しい人

「心配しないで」で
 色々心配するのがお節介
 全然心配しないのが優しい人

「もう放っといて」で
 放っておかないのがしつこい人
 放っておいてあげるのが優しい人

「もう騙さないで!」で
 まだ騙すのが詐欺師
 もう騙さないのが優しい人

「やめて!」で
 やめないのが鬼畜
 やめるのが優しい人

「やめないで!」で
 やめるのが甚振り屋
 やめないのが優しい人

「いぢめて!」で
 いぢめてあげないのが冷血漢
 いぢめてあげるのが心優しい人

 貴方は優しい人ですか?
 手前は優しい人ですよ。


年歳 03/09/12

 一応劉廷芝の作とされている詩の一節、「年年歳歳花相似 歳歳年年人不同」有名だから聞いたことぐらいはあるだろう。元の「代悲白頭翁」は七言古詩で結構長いのだが、ここだけが抽出されて一人歩きの末に最早これだけで「完成形」とも思える程存在感のある言葉になっていて、それはそれでいいのだが、日本語としてそのまま読み下すのは余りにも芸がない。

 「ねんねんさいさいはなあいにたり さいさいねんねんひとおなじからず」

 確かに意は伝わるし、それ以外に読みようもないのだが、折角だから少し弄んでみようじゃないか。意味としては「としつきの中で花は変わらず咲き、としつきの中で人は変わりゆく」といったところであるが、無論字句の意をそのまま受け取ることなく底に流れる深い心を読み取るべきであり、さりとて正しく読み取ることが出来るかと言えば不可能であるから、「訳」と呼ぶより「解釈」の方が相応しいことをやってみよう。

 しかし何故これに引っ掛かったのか。ずっと考えてはいたが、ようやく判った。この訳あるいは解釈として「時の過ぎゆくままに」でいいのかどうかが小骨だったのだ。確かにこれは見事よりも美事と言いたくなる位ぴったりではあるが、なんとなく「as time goes by」は例の旋律と共に湧く感興があり、それも確かに意味は通っているとも思うが、この漢詩を見てボガートが浮かぶのは少し違う気もするのだ。

 そしてもうひとつの小骨はこれだった。

 ゆく川の流れは絶えずしてしかも元の水にあらず
 淀みに浮ぶ泡沫はかつ消えかつ結びて
 久しくとどまりたる試しなし
 世の中にある人と住処とまたかくの如し

 意は全く同じではないか。しかし「年年」の訳を「行く川の」とするのは余りにも強引過ぎる気もするのであって、ここはひとつ日本語の最も美しい響きである七五調に乗せてみようではないか。しかしどうせなら「時の過ぎゆくままに」も折角だから使おう。「過ぎ行くままに」で丁度七文字だから「五・七・五・七・七」の最後の七にして、「時の」をその直前に置く。つまり

「あいうえお かきくけこさし すせそたち
 なにぬね時の 過ぎゆくままに」

 さて、骨が出来た。どう料理してくれようか。「花」と「人」は入れねばなるまい。どうせなら長さんにも一枚噛んで貰おうか。「うたかた」を使おう。約一時間転がし続けて、傍から見ると廃人状態であるが、やがて「でけた」

「人に花 変わり変わらず 泡沫と
 寄り添う時の 過ぎゆくままに」

 よくよく見ると無理矢理繋げたせいか、どうも座りがよくない。「時の」があるから「泡沫の」に出来ず、「泡沫に」とすれば益々意味は放散されて言葉の流れがどうにも悪い。しかし実は既に飽きているので「もう少し何とかならんか」と思いつつ、ここで力尽きておやすみ。


四季節々 03/10/10

夏も近付く八十八夜
野にも山にも若葉が繁る
あれに見えるは茶摘じゃないか
茜襷に菅の笠

秋も近付く精霊流し
川に海に灯火揺れる
あれに見えるは祭じゃないか
乱れ太鼓に宵囃子

冬も近付く紅葉化粧
林に森に烏が帰る
あれに見えるは焚火じゃないか
伸びゆく影に雁渡し

春も近付く七福詣で
辻に小径に花雪積もる
あれに見えるは初日じゃないか
達磨釜座霙鍋

---

※文部省唱歌「茶摘」

夏も近付く八十八夜
野にも山にも若葉が繁る
あれに見えるは茶摘じゃないか
あかねだすきに菅の笠

日和続きの今日此の頃を
心長閑に摘みつつ歌う
摘めよ摘め摘め摘まねばならぬ
摘まにゃ日本の茶にならぬ

 を元に構成しました。


おはよう 03/10/23

 おはようヘルペス君。KUSATSUはいい湯かね。君の傷はそろそろ癒えたことだろう。早速だがこの男を見てくれ。彼はスピロヘータ・トレポネーマ、無差別テロリストだ。あまりにも危険であるが故に我々には手が出せない。そこで君達の出番だ。彼は得体の知れない技術で世界中を混乱の渦に叩き込もうとしている。彼は淋巴腺攻撃そして薔薇の花攻撃そして鼻崩し攻撃を得意としている。気付かないまま末期に至ると頭がおかしくなる。既に当局のエージェントが多数やられた。

 そして彼には仲間がいる。いずれも強者だ。

 彼はクラミジア・トラコマチス、潜伏作戦を得意としている。いつのまにか身近にいるからよくよく注意したまえ。彼の攻撃は殆どそれとは気付かないが、ずっと気付かなければ後々子孫繁栄が望めなくなる恐れがある。こまめに検査することだ。不幸にして攻撃を受けていたことが判明したなら速やかに抗生物質を服用したまえ。

 彼はトリコ=モナス、彼は風呂プールタオル下着便座なんでもござれ、見境なしの変態野郎だ。攻撃力は大したことがない代わりにしつこい。周りの人間を巻き添えにして、また君も巻き添えにされてしまう危ない奴だ。甘く見てはいけない。注意した方がいい。

 そして彼はコンジ・ローム、彼は何かの毒虫を使うらしい。彼の攻撃は恐ろしい。殆ど痛みはないが、視覚的効果が抜群なのだ。もし攻撃を受けたら君は一生カリフラワーが食べられなくなるだろう。反撃するにはレーザーメスを使えばよいが、そうなると今度は焼肉の匂いが駄目になるだろう。全て終われば精神的に参るだろう。

 彼はカンジダ、怪しげな妖術「インキーン」を使うらしい。何故か温泉とプールにいる写真しか入手出来なかった。しかしこの世界では有名だから君も知っているだろう。「ミズムーシ」攻撃も性質が悪い。攻撃を受けた場合は軟膏で対抗したまえ。

 まだいる。彼女はK・G・ラミ、美しいだろう。しかし美しい薔薇には棘があると言うだろう。彼女の棘にやられると痒くて悶える事になるから気を付けてくれ。攻撃力自体はさほどでもないが、眠れないほどのたうち回り掻き毟ってしまうので注意したまえ。攻撃を受けた時はパンツが糞で黒く汚れる。すぐに軟膏か水銀を使え。手遅れだったら剃れ。

 最後は淋美容、この女は凄腕だ。彼女に攻撃されても大抵の人は気が付かないのだ。それでいてしっかり効果があるから凄腕なのだ。抗生物質で対抗できるが、自覚症状のない者がこいつの攻撃を助長している。くれぐれも気を付けてくれ。 

 さて今回の君の使命はスピロヘータ・トレポネーマ、トリコ=モナス、カンジダ、コンジ・ローム、K・G・ラミ、淋美容の極悪で凶悪な、それでいてごく身近な危険分子集団、攻撃を受けると物笑いの種になってしまう傍迷惑な彼等を、殲滅することだ。

 例によって君もしくは君のメンバーが感染しても発病しても当局は一切完治出来ないからそのつもりで。

 なおこのテープは自動的に消毒される。

 性交を祈る。


紙一重 03/10/24

 これもまたメモにあって没ネタにするのが惜しかった「肉を切らせて骨を断つ」この言葉かねてより勿体無いと考えていたのだ。紙一重を表すのにこれ以上見事な言葉はないが、しかしこれだけでは唐突感があるように思える。だから色々加えたり入れ替えたりして遊んでいたが、今回は妙に時間がかかった。順を追う。まず「肉」「骨」ならば、その前に「皮」を置くべきだと考えて

皮をどうにかさせて肉を切る
肉を切らせて骨を断つ

 ところが皮をどうさせるかが浮かばない。一日放置してみると閃いた。皮は「裂く」だ。裂け裂け。

皮を裂かせて肉を切る
肉を切らせて骨を断つ

 うむ。なかなか対し方がよい。一旦これで納得してしまい、没印をつけて長いこと放っておいたが、突然気になった。いきなり皮を裂かれるというのは気分が悪いではないか。まず空を切らせよう。

空を切らせて皮を裂く
皮を裂かせて肉を切る
肉を切らせて骨を断つ

 「空」「肉」の両方で「切る」を使うのは気に入らない。しかし「空」は「切る」と相場が決まっているから「肉」をどうさせようか。二・三日して思い付く。「削げ削げ削いどけ」

空を切らせて皮を裂く
皮を裂かせて肉を削ぐ
肉を削がせて骨を断つ

 これで完成か?いや、三行ではバランスが悪い。四行にしたい。「空」より前はどうにもならないから、「骨」を断たせた後に息の根を止めればよい。「息を止む」「生を止む」ここで更に一週間ほど足踏みした末に焦れてこうなった。

空を切らせて皮を裂く
皮を裂かせて肉を削ぐ
肉を削がせて骨を断つ
骨を断たせて命取る

 ああああ。折角それぞれの後段、体言用言「を」で繋いでいた並びが崩れてしまった。漢字と平仮名の位置・数すべてぴったり合っていたのにここで力尽きるのか。駄目だ。それは美意識が許さない。どうにかしてやる。それぞれ「裂く」「削ぐ」「断つ」と二文字できたわけだから最後も二文字でびしりと決めたい。「取る」では命に固定されてしまうからどうするか。ここでついに本気になった。それまでは見た時にちらと考える程度であったのだが、こんな単純なものに足を取られて頭に来たので腰を据えて辞書を片手に三十分。

 「骨」よりも痛いところに「断つ」よりも痛い表現を使用する。最初が「空」であるから「息」でよい。では「断つ」より痛いのは。いや待て。・・・わかた。肉を「切る」から「削ぐ」に変えた以上は骨も「断つ」に拘る理由などない。「断つ」はずらして「息を断つ」「息を絶つ」?自動詞ではちとあれか。「断つ」でいこう。では骨はどうする。折るしかあるまい。でけた。

空を切らせて皮を裂く
皮を裂かせて肉を削ぐ
肉を削がせて骨を折る
骨を折らせて息を断つ

 内容はともかくこの揃い方は乾杯に値すると思うから、安心してこれから飲むよ。


ハリマルマツリ 03/10/30

 ハリマルマツリの木の下で
 おだやかな夢が秋を踊っていた
 どうしたんだいと訊ねると
 私は捨てられたんですと答えた

 最後に燐寸が一本残った
 使いたくなくないのに
 使いたくてうずうずしていた

 したり顔の雨雲が駆け抜けた
 雨雲は時間を掠め取って行ったから
 水溜りには空が映っていなかった

 洒落た眼帯をした山猫があくびをしながら転がっていた
 ひらひら舞う蝶を片目と片手で追いながら
 ハリマルマツリのむこうで番うホロホロ鳥に
 尻尾の先だけ向けていた

 ハリマルマツリの木に登り
 沈む夕日を眺めていたら
 夢も隣でじっと見ていた
 何か声を掛けたくなって
 これからどうするのと聞くと
 私はいつまでも待っていますと言った

 ハリマルマツリの花が散り
 ハリマルマツリの実が生って
 ハリマルマツリは喜んでいた

 追いかけてくる空舟つ影
 ハリマルマツリは飲み込まれてしまった
 丸く大きく騒いでいた葉は
 みんな静かに動きを止めて
 影の中で緊張しているようだった


電網落書 03/11/09

此頃世間ニ流行ル物

略取 誘拐 拉致 監禁
惨殺 心中 バスジャック
遺伝子組替 ダイオキシン
産廃 原発 毒ノガス
タマチャン 住基ト 雪印
地震 噴火ニ 山ノ火事

構造改革 民営化
派閥 世襲ニ 族議員
癒着 賂 天下リ
秘書給与 抵抗勢力 伏魔殿
誹謗中傷 罵詈讒謗
合併 分裂 マタ合併
牛歩 乱闘 水ヲ掛ケ
毎度馴染ノ 調和劇

蘆洞 大浦洞 核開発
脱北 亡命 喜ビ組
米ハナクトモ 弾ハアル
進メ総員 火達磨ダ

バース タリバン アルカイダ
フセイン ブッシュ ビンラディン
悪ノ枢軸 多発テロ
自作自演ノ ペンタゴン
殺人玩具ノ 見本市
劣化ウランノ 盾トナリ
最早子供ガ 産メヤセヌ

夢ハ一夜ト 言ハレドモ
次ナル夢ガ アレバコソ

花モ蕾モ 踏ミ潰シ
吹雪ニ嵐ニ 踊ルレバ
目指スハ 極楽バカリナリ


見立て弄ぶ 03/11/28

 「女とは二十代はアフリカのように半分しか開発されておらず、三十代はインドのように熱く神秘的で、四十代はアメリカのようにテクニックが完全で、五十代はヨーロッパのように瓦解し、六十代はシベリアのようにその所在は誰も知っているが誰一人行きたがらないもの」

 三省堂「ことばの百科事典」最近これが面白くてずっと繰り返し読んでいるのだが、中のユーモア辞典、女の項目のひとつとして載っている。この見立ては古くからあり、変種が幾つあるのか誰も把握出来ないほど有名なアナロジィジョークなのだが、これを眺めていて、ふと考えた。「ここには女の十代がない」「ここには七十代、八十代がない」「ここには男を見立てたものがない」ではやってみようじゃないか。

 現在ヨーロッパは一応統合の方向に向かっているふうに思われているので、「瓦解している」は使えない。そもそもこれを土台とすべきかどうか。同時に男も作るから、そして男は見立ての順番はそのまま金庫のダイヤルを回すようにずらして見立てたい。同時進行にするから、まずどこから手をつけようか。「十代女はアフリカの如く未開発」「二十代女はインドの如く熱く情熱的」とずらしてみる。アメリカは「テクニック」ではなく、「ヒステリカル」に変え、年代もずらして「七十代女はアメリカの如くヒステリカル」

 地域名とそれを象徴する人種気質が大切な構成要素ではあるが、これを厳密に国名あるいは人種に固定するとかなり難易度が高くなる。今は半酔でぽおとしているから国・地域・人種適当なところを当てて、その印象からくるところを見立てるだけにしておく。難しくなってきていらいらする余りつい飲み過ぎてしっちゃかめっちゃかになることは既に証明されている。適当に行こう。

 八十代女。「日本の如く何を考えているか判らない」とする。ここで男の方も同時進行させる。「二十代男はアメリカの如く傲慢」アメリカの次が日本であるから「三十代男は日本の如く頼りない」次がアフリカだから「四十代男はアフリカの如く暑苦しい」次インド「五十代男はインドの如くしつこい」さあ残りは「三十代女=六十代男」「四十代女=七十代男」「五十代女=八十代男」「六十代女=十代男」のよっつ。それぞれぴったりの地域なりを探して特質を挙げればよい。

 まず、三十代女と六十代男に共通する特質は何か。何か達観したというか、突き抜けたというか、諦めたというか、開き直ったというか。これか。開き直っている国はどこだ。今現在の時勢に流されてはいけない。今までも、そしてこれからも開き直っている印象があるのはどこだ。だれだ。あ。ヨーロッパわかた。「無理してる」だ。あ。わかた。六十代女と十代男はブラジルだ。「六十代女はブラジルの如く派手」「十代男はブラジルの如くうるさい」そして「五十代女はヨーロッパの如く無理をしていて」「八十代の男はヨーロッパの如く動きが鈍い」

 今一瞬記述が飛躍したわけだが、これは頭の動きをそのまま正直に連ねているのであって、ただ表にして眺めていたら突然浮かんだものであるから、何故ヨーロッパが出てきてブラジルが出てきたのか、確かな理由は判らない。酔いが回って来たので堕ちる前に仕上げてしまおう。加速する。

 残りはふたつ、どこかで南極を使いたい。南極は寒い冷たい。冷たい女は十代か。では四十代男は南極の如く何だ。とりあえず、アフリカを十代女から三十代女にずらして、「三十代女はアフリカの如く陽気」「六十代男はアフリカの如く暑苦しい」男はどの世代でも暑苦しいと思うが、よいよい。そしてわかた。「四十代男は南極の如く淋しい」男はどの世代でも淋しいが、よいよい。

 さあ残るは「四十代女=七十代男」だ。地勢的に見て、ロシアを押し込もう。「四十代女はロシアの如く厚かましい」「七十代男はロシアの如く過去に逃げる」それから「八十代」は「八十代以上」にすればよい。一桁はもう疲れた。一応完成したからこれでよいよい。

十代の女は南極の如く冷たくて
二十代の女はインドの如く神秘的で
三十代の女はアフリカの如く陽気で
四十代の女はロシアの如く厚かましくて
五十代の女はヨーロッパの如く無理をしていて
六十代の女はブラジルの如く派手で
七十代の女はアメリカの如くヒステリカルで
八十代以上の女は日本の如く何を考えているか判らない

十代の男はブラジルの如くうるさくて
二十代の男はアメリカの如く傲慢で
三十代の男は日本の如く頼りなくて
四十代の男は南極の如く淋しくて
五十代の男はインドの如くしつこくて
六十代の男はアフリカの如く暑苦しくて
七十代の男はロシアの如く過去に逃げて
八十代以上の男はヨーロッパの如く動きが鈍い

 どうだ。順番はそのままで三つずれているだけだ。しかしお前は世界中を敵に回すつもりか。世界の半分を敵に回すならまだ話は判るが、その場合、敵が大好きという一方通行になっているわけだが、嗚呼もう駄目だ。これ以上続けると何書くかわからんようになる。さらばだ。


五尺五寸 03/12/25

遠い昔のそのまた昔 西の浮世の一角で
宵街小町に心奪われ 疾る鼓動は機関銃
踊る闇夜の風に乗せ はぐれきすぐれべにしぐれ

肩で風切る鎌鼬 針の穴より細い道
熱い札束だらだらこませなきごませ
引かれ者の子守唄 今宵の月は電装か

尻を絡げて 帆を旗げて
打出の小槌でどつきまわして
六丈三色鞭でびし 八丈箆バラ鞭でばし
道化の梅に罠の柿
浮世の波に浮かべてみたまえ

唾を摘み草 壺に焼き
青筋アポロに小夜衣 候帽子の巻論と
側を傾げたサンパの娘は八方美人の赤い鍋
三歩進んで二歩縒れて
されば三十六計蜘蛛の子散らし

淑女の扉に叩き付けてジルバ 
足跡刻めば夢の間際で踊ってやるぜ

転がる意識と 届かぬ腕と
解放六区の停車場で
溢れる涙に口吻を
旅に花咲く願いを込めて

綴ろう明日と 五尺五寸の物語


風林火山 04/04/01

 「風林火山」という成語があるね。武田信玄で有名だが、元々は孫子の兵法であることを知っている方も多いだろう。しかしその原文で実は風林火山に続きがあることを心得ている者は少ないだろうと思う。

・・・、故其疾如風、其徐如林、侵掠如火、不動如山、難知如陰、動如雷霆、・・・

 孫子「孫子」岩波文庫、金谷治訳注を参考にして進める。便宜上段落分けされ、うち第七段落の軍争篇とされた中にこのくだりがある。用兵の心得として軍事の原則を述べているところだ。故にその疾きこと風の如く、その徐か(静か)なること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如く、知り難きこと陰の如く、動くこと雷霆(らいてい)の如し。「霆」は「いかづち」であって、雷霆で一体となっている。ここは「・・・山」と「・・・陰」を入れ替える説もある。その場合「不動如山、動如雷霆、」と続くからこちらを使いたい来もする。また「霆」ではなく「震」が一般的であり、「林」「陰」「震」と韻を踏むことになるからなのだが、これは後世の人が少し弄った可能性がある。

・・・、故其疾如風、其徐如林、侵掠如火、難知如陰、不動如山、動如雷震、・・・

 前後には色々繋がっているのだが、「如」のところはこの六つ。これを繋げると「風林火山陰雷」となる。日本語で風林火山が成句として完成している以上「風林火陰山雷」は蹈鞴める印象があるので前者を覚えるとよい。信玄が何ゆえ四文字にしたのかは知らないが、圧縮してなお意味が飲み込める形になっているのは見事と言う他ない。

 しかしこういうものを見ると弄りたくなるのであって、戦陣訓の掛りとして少し弄んでみた。後半しっちゃかめっちゃかになった気もするが、「風林火山」として、陰と雷は中に埋め込み、とにかく形だけでも整えてみた。但し平仄は完全に無視しているからただの遊び止まりだ。

疾駆すること風の如し
消滅すること煙の如し
潜行すること陰の如し
浸潤すること水の如し

繁密すること林の如し
漂流すること雲の如し
輝発すること月の如し
噴出すること泉の如し

猛攻すること火の如し
直進すること光の如し
剛直すること鋼の如し
電撃すること雷の如し

聳立すること山の如し
湾曲すること竹の如し
揺籃すること海の如し
浮遊すること星の如し

 ところが語句はそのままで順番を入れ替えると猥褻な意味になる。

湾曲すること竹の如し
剛直すること鋼の如し
聳立すること山の如し
繁密すること林の如し

潜行すること陰の如し
浸潤すること水の如し
輝発すること月の如し
電撃すること雷の如し

直進すること光の如し
疾駆すること風の如し
猛攻すること火の如し
噴出すること泉の如し

揺籃すること海の如し
浮遊すること星の如し
漂流すること雲の如し
消滅すること煙の如し


消える客 04/04/24

「お客さん。幽霊って信じます?幽霊。信じません?。私らね、こうやって車転がしてますでしょ。そうすると色々あるんですよこれが。やっぱり。信じて貰えないかもしれませんけどね。こういう話嫌いですか?止めましょうか?続けましょうか?聞きたいですか?じゃ聞いてください。

 私らの商売でね、よく聞く話でしてね。有名だから多分お客さんも聞いたことあると思いますよ。ほら、幽霊乗せて何時の間にか消えててシート水浸しになってたっていう話。あるでしょ聞いた事。私らの内々ではね、この話凄く詳しく伝わってるんですよ。私は乗せたことありませんけどね。乗せた人なんて何人もいない筈ですよ。一番元の人だけじゃないかなあ、乗せたのは。その話ね、墓場とかね、あれですよ、青山墓地抜けたら消えたとかなってますでしょ。違うんですよ。本当はね。

 元々は横須賀の話でしてね。何十年も前の話。もうその人引退したって聞きましたけどね。世間では夏休みに入る頃の蒸し暑い季節。なんでも保土ヶ谷から若い女の客乗せてね、横須賀へ行ってほしいとね。なんだってこんな場所からこんな時間にと思いながらね。夜中の三時くらい。あがり前のロング一発って言いますけどね。最後の客が長距離ってこと。特に荷物持ってない若い女が夜中の三時にね。ちょっとあれですけどね。気使って話し掛けても頷くだけで何も言わないからこりゃあんまり関わらないほうがいいかなって運転に専念して。でもミラーでちらちら見ながらね。男と喧嘩して帰るところかなと思ったりね。財布持ってなかったらどうしようとかね。それで横横通ってね、横浜横須賀道路ね、横須賀入って。それでね。街中じゃなくて山のほうってね。あたりもう真っ暗で。街灯あるってのは今だからで、これ昔の話でしてね。ホントに街外れたら真っ暗なところでね。住宅地の中で少し走ってそこでって言われてね、三言目ですよ、横須賀、山のほう、そこでって都合三言目。もうさっさと降ろして帰りたいからね。着いてすぐここでいいですかって振り向くといない。

 ドア開けてないんですよまだ。そこで、ってたった今言った筈の姿がないんですよ。下に潜り込んだかなって見るとね、いなくてね、ぽた、ぽた、って聞こえてね。ちょっと目を上げたら座席から水みたいなのがね、滴っててね。シートびしょ濡れでね。最初はおしっこ漏らして逃げたかと思ってね。でもドア開けてないしね。窓だって閉まってる。車内灯点けてやっぱりいない。これはなんか嫌だなーと思ってとりあえずその家見たらね。電気付いてない。とりあえず車降りてね、その家に近づいたら廃屋だったって。明らかにもう何年も人住んでないの、絶対に。窓ガラス割れてて屋根崩れてる。門扉は錆びた鎖でぐるぐる巻き。もうとにかく薄気味悪くて逃げ出したって。シート濡れてるの考えないようにして飛ばして帰った。ロングの時はムセンでどこまで行くって報告するんですけども。幽霊乗せたって言っても信用されなくて結局給料から差っ引かれたって。

 でね。何年かしてすっかり忘れててね。でもある日物静かな先生ふうの人乗せてね、横須賀って。それで昔のこと思い出してね、お客さん、幽霊って信じます?幽霊。信じません?。私らね、こうやって車転がしてますでしょって今の話したんですって。話し終えてその人が山のほうって言ってね、吃驚してああこの辺りでした、前はもっと暗くて街灯なかったですけどって言いながらね、なんとなく見覚えのある道でね、急に思い出してきてこの道!この道!あれ!あれ!あの家!あの家!って叫んじゃってね。通り過ぎたら先生が静かな口調であの家は知っていると。もう十年以上昔にあの家で殺人事件があったと。夫婦が昔住んでいて旦那が出張している晩に嫁が殺されたと。それで今でも犯人が捕まっていないらしいと。旦那は仕事止めてどこへか行ってしまったと。以降十年以上誰も住んでいないと。そういえばあそこの嫁は浴槽に頭押えつけられて溺死させられたのだと。その事件は確か今日と同じような蒸し暑い夏休みの直前だったと。それで私が何故こんなに詳しいかと言うと実は・・・

 という話なんですよ、お客さん。・・・お客さん?寝たふりですか?」


梟の引越 04/05/05

 静かな湖畔の森の中で動物たちが仲良く暮らしていた。

 一日が終わり陽が沈む頃、皆は巣や塒に帰り、ひとりで或いは家族と共に眠りに就く。しかし彼らにはひとつの悩みがあった。日が暮れてあたりが暗くなると、それまで眠っていた梟が起きてきて、夜を鳴声で満たすこと。

 ある日とうとう我慢出来なくなった動物たちは、夜になるのを待って梟に言った。あなたの声がうるさくて眠れません。我々は夜明けと共に起きて日暮れと共に眠ります。何故あなたは日暮れの後に起きて我々が眠る時間に鳴くのですか。

 私は夜の番人です。この森が侵されないよう見張りをしているのです。私は他の鳴声を出すことが出来ません。私が鳴くのは森が平和であることの証明です。

 話し合いは夜を徹して行われ、動物たちは梟に対して、起きる時間を合わせるか、鳴くことを止めるか、さもなくば森を出てゆくかと迫った。梟は最早この森に居場所のないことを悟り、立ち退くことにした。

 空の高くを渡る風に乗り、三日三晩飛び続けて見つけた森に住み着いた梟は、しかしその森の動物たちにまた嫌われてしまった。

 再び風に乗り、辿り着いた新しい森に住んでいる年取った梟がこう言った。鳴声を嫌われて引越しを繰り返しているのでしょう。梟が夜に起きて森の番をしながら鳴くことは変わらないからどの森へ行っても同じことを繰り返すだけですよ。君が梟であり続ける限りは。


不鼎立 04/09/14

 「鼎立しない話」という分野がある。

愛と暇がある時 金がない
暇と金がある時 愛がない
金と愛がある時 暇がない

 の如きもので、三つの条件が並び立つことのない状況をまとめたものだ。米原万理が紹介していた旧ソ連製では「賢さ・誠実・党」となっていた。

賢さと誠実が党にはない
党に誠実ならば賢くない
賢い党は誠実ではない

 鼎立しないものを代入するための基本形としては以下を用いる。

Aのとき Bはない
Bのとき Aはない

Bのとき Cはない
Cのとき Bはない

Cのとき Aはない
Aのとき Cはない

CとAのとき Bはない
AとBのとき Cはない
BとCのとき Aはない

AとBとCは鼎立しない

 上司・部下・同僚を代入すればこうなる。「会社で」

上司に恵まれた場合 同僚に恵まれない
同僚に恵まれた場合 上司に恵まれない

同僚に恵まれた場合 部下に恵まれない
部下に恵まれた場合 同僚に恵まれない

上司に恵まれた場合 部下に恵まれない>

部下と上司に恵まれた場合 同僚に恵まれない
上司と同僚に恵まれた場合 部下に恵まれない
同僚と部下に恵まれた場合 上司に恵まれない

上司と同僚と部下に恵まれることはない

 この構造は使い途の少なさが障壁であるが、三ヶ条などを代入してみると結構楽しめるものだ。

「飲食店で」

早いとき 安くない
安いとき 早くない

安いとき 美味くない
美味いとき 安くない

美味いとき 早くない
早いとき 美味くない

美味くて早いとき 安くない
早くて安いとき 美味くない
安くて美味いとき 早くない

早くて安くて美味い店は潰れる


電網落書・甲申 04/12/30

此頃世間ニ流行ルモノ

合併 分裂 栄養費
新規参入 依怙贔屓
所有者辞任ト ストライキ
最多安打ハ 新記録

染色温泉順不同
感冒罹患ノ 家禽達
五輪 御粗末 糞判定
放送協会 粘ル首領

健保未納ノ 馬鹿騒ギ
金融 経済 売国奴
降込詐欺師 新紙幣
過チヲ 繰リ返シマスト 増税説

誘拐 脅迫 自己責任
乱射乱撃 立テ籠モリ
凶悪事件ノ 低齢化
放火続イタ 倉庫売

爆発実験 列車事故
暗殺未遂カ 偶然カ
帰国果タシタ 拉致家族
調ベタ遺骨ハ 別ノ人

台風上陸 新記録
水害 噴火 大地震
最後ハ トドメノ大津波

遠イアノ日ノ俄雨
イツシカ希望モ色褪セテ
巡ル黄昏霧ニ溶ケ
仇モ情モ鏡ノ向コウ

夢ノ帳ヲ降ロスベク
儚イ泪ノ一雫
流ス暇モナカリケリ


都 05/02/08

ロンドンは霧の都
パリは花の都
モスクワは噂の都

 この三段落ちはソ連時代のモスクワで流行っていた冗談らしい。以下適当に並べる。

ウィーンは音楽の都
エルサレムは永遠の都
ローマは歴史の都
アテネは神の都

オタワは水の都
カイロは砂の都
スリジャヤワルダナプラコッテは宝石の都
アムステルダムは窓の都

ドーハは悲劇の都
ハバナは楽園の都

マレは珍しい都
モロニは変態の都

マスカットは葡萄の都
ソウルは魂の都
ヤレンは男親の都
タリンは借金取りの都
ヘルシンキは就職難の都
ベルリンは鈴の都
ホニアラは謎の都

バンコクは駄洒落の都
そして東京は落ちつかない都


春 05/03/19

 漢詩のようなものを作ってみた。そんな気分にさせられる季節だ。

 題名は「春」としておく。

煌陽仰流涕
涼風靡垂洟
花愛心無偽
而花粉不許

 これだけだ。俺は今防毒マスクが欲しいよ。




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