花といのちを愛する人へ
花といのちを愛する人へ
朝に摘まれ 夕に枯るる
儚く悲しい命を愛する人へ
病半ばの 友達訪ねて
手には花束 笑顔をもって
無聊を慰む お見舞いに
美しいこと 美しいひと
あなたはとても善人です
さぞや満足したことでしょう
あなたは病を得たことがない
見舞いに花を得たことがない
とてもとても幸せな人
病に伏して 死を拝むとき
花を眺めて 考えること
花を見つめて 涙すること
美しい花 美しい花
麗しい花 麗しい花
悲しい花 悲しい花
どうしてですか?なぜですか?
いのちと闘う 苦しいときに?
必ず枯れる花をお見舞いに?
冷たい刃で 茎を絶たれて
それでも必死に 咲く花を
優しく撫でる 病うひと
はなびらが散り うなだれて
葉の先々から 死に犯されるとき
それを見ている 病うひと
落ちた花びらを つまむとき
かさついた葉を ちぎるとき
それを哀しむ 病うひと
ただ枯れるためだけに
ここにきた せつない花を
ただ慈しむ 病うひと
根のあるものは「寝付くから」
そんなこじつけ 押付けられて
枯れる花見て今日も泣きます
一粒の種さえ残せないまま
退院したら退院したら退院したら
貰った花を 樹を植えて
いのちを確かめて みたいのです
どうか私が 病うとき
根のある 生きる 花を樹を
見舞いにもって きて下さい
決して枯れなどしない花
根を張り 種付く花を樹を
決して枯れなどしない樹を
私は生きて 生きてゆきます
貰った花を 樹を 植えて
いのちのあかしを 抱きとめて
花といのちを愛する人へ
花といのちを愛する人へ
花といのちを愛する人へ