「ペンギンのどこが好き?」
「飛べなくて泳げるのに鳥だと言い張るところ」
- 企鵝 03/08/01・02・03
まあ、実のところ企鵝が大好きなのであるが、和名に不満があるのでやってみる。
手前を含めた素人がラテン語の学名を知る必要はなく、知ったところで使う当てもない。専門家は学名は当然、通称も知っているわけであり、通称である英名さえ知っておけばどうにかなるのだが、日本で使われている和名が英名の片仮名書きであったりすると「和名の意味ないがな!」と思うのであって、片仮名が日本語であることを否定するつもりはないが、ただ片仮名より漢字の方が好きなので、企鵝全種、漢字の和名にしてみよう。
「ペンギン」は「企鵝」「人鳥」「片吟」と当てられるが、一番古いところで「企鵝」をペンギンとして採る。
企鵝は六属あって、その下を何種類に分けるかは諸説あるのだが、十六種、十七種、十八種、細かくすれば二十五種までいくのだが、簡単に雑種が生まれるのは雑種ではなくて同種とみなすほうがよいのではとする考え方もあり、おおよそ十六か十八であるようだ。
六属はこうなっている。
pygoscelis ピゴセリス属
Aptenodytes アプテノディテス属
Eudyptes ユーディプテス属
Megadyptes メガディプテス属
Spheniscus スフェニスカス属
Eudyptula ユーディプテューラ属さて、それぞれの記述は以下の通りとする。
英名[学名]
和名
住所
状況
御託
漢字和名(よみかた)
※一言そして各情報は
藤原幸一「ペンギンガイドブック」TBSブリタニカ
川端裕人「ペンギン、日本人と出会う」文藝春秋
青柳昌宏「ペンギンたちの不思議な生活」講談社ブルーバックス
小学館ランダムハウス英和大辞典
研究社英和大辞典
を参考にした。●ピゴセリス属 三種
○ Adelie penguin [pygoscelis adeliae]
アデリーペンギン/アデレーペンギン/アデリアペンギン
南極大陸沿岸から広く分布
安定種
最も漫画的な姿形と目をしている。
アデリーは人名に由来するのでいきなり難しい。探検家の妻の名であるが、アデリーが名前なのか愛称なのか、愛称なら元は「Adelineアデリーン」か「Adelinaアデリーナ」かわからない。Adelaideアデレイドの可能性もある。ではこの基本形の「Adela」は何を意味するか。それを漢字にすればよい。Adelaの原義は「girl of the noble family」で古仏語か古独語かよくわからないがとにかく「御嬢企鵝」は無理がある。しかしアデリアの和名もあるからさらにややこしい。まあよい。探検家デュモン・デュルヴィルと奥方に敬意を表して愛照企鵝(あでりぺんぎん)とする。
※最初からこんな当字では先がとても不安だ。
○ Chinstrap penguin [pygoscelis antarctica]
チンストラップペンギン/ヒゲペンギン
主に亜南極
安定種
あごに線のようなヒゲ状の模様がある。漢字に出来る和名がある以上それでいいのだが、ヒゲには「髭」「髯」「鬚」の三字あり、指す意味が違うから適切なものを選ばねばならない。「髭」はくちひげ、「鬚」はあごひげ、「髯」はほおひげということは、彼を正面から見ると、側頭部からもみ上げを通って頬を通って顎の裏を通ってまた反対の側頭部まで登る一本の線である故に・・・どれだろうか。はっきり言うとひげというより「黒い水泳帽を被って黒いゴムひもで留めている」ようにしか見えないのであって、英名が「チンストラップ顎留紐」であるから「ひげ」は却下して顎紐企鵝(あごひもぺんぎん)とする。
※あれはひげには見えんよ。
○ Gentoo penguin [pygoscelis papua]
ジェンツーペンギン/温順ペンギン
主に亜南極
近危急種
温順(おんじゅん)ペンギンと既に漢字の和名があるが、学名のジェンツーを解明しよう。ジェンツーの由来は研究社新英和によると「ヒンズー語」だか「gentio」だか「GENTILE」だかよく判らないのでランダムハウスを見ると「1.ヒンズー人」「2.ヒンズー人の非ヨーロッパ言語」とある。「貧数企鵝」では少々悲しいので、ペンギンガイドブックに「つがいの絆は強い」とあることから英名の音訳当字、順通企鵝(じゅんつうぺんぎん)とする。
※「痛」は却下。
●Eudyptula ユーディプテューラ属 一種
○ Little penguin [Eudyptula minor]
リトルペンギン/コガタペンギン/コビトペンギン
オーストラリア南岸、タスマニア、NZ本島、チャタム諸島
不安
この種から「White-flipped penguin[Eudyptula albosigna]ハネジロペンギン」を独立させて数えると十八種となる。参考までに羽白企鵝としておく。
どうせ和名の「小人」は使えないだろうからいっそのこと龍之介に敬意を表して侏儒企鵝(しゅじゅぺんぎん)とする。
※「敬意を表して」二回使ってしもうたが、もうどうでもよろし。
●Aptenodytes アプテノディテス属 二種
○ Emperor penguin [Aptenodytes forsteri]
エンペラーペンギン/皇帝ペンギン/帝王ペンギン
南極
安定種
全企鵝中最も大きく皇帝の名に恥じない。胸元の黄色の鮮やかさが更に威厳を漂わせいてる。また、企鵝の雛はこの種を除いて皆親とは全然違う風体であるが、この種の雛は親の姿そのままの雛であり、雛人気も一番高い。これはもう英名と和名には文句がないのでそのまま皇帝企鵝(こうていぺんぎん)とする。
※帝王は却下。「南極の帝王」では濃すぎる。
○ King penguin [Aptenodytes patagonicus]
キングペンギン/オウサマペンギン
亜南極の島々
安定種
皇帝企鵝に似ているが、皇帝企鵝より小さい。和名のオウサマペンギンで問題はないのでそのまま王様企鵝(おうさまぺんぎん)とする。
●Eudyptes ユーディプテス属 六種
○ Erect crested [Eudyptes sclateri]
シュレーターペンギン/マユダチペンギン
ニュージーランド
安定種
このユーディプス属は頭の飾りが特徴で、眉毛にも頭毛にも鶏冠にも見える。「エレクト・クレステッド」には「とさかびんびん」と当てたくなるが、和名にマユダチペンギンとあるのでそのまま眉立企鵝(まゆだちぺんぎん)とする。
※「眉起」にしたいが読みにくい。
○ Rook hopper [Eudyptes chrysocome]
ロックホッパーペンギン/イワトビペンギン
南アメリカ先端及び亜南極
比較的安定種
赤い目が印象的なキザなやつ。喧嘩っ早いのでしばらく絶滅の心配はない。ロックホッパーの直訳「イワトビ」をそのまま漢字にして岩飛 いや
岩跳 もとい岩鳶企鵝(いわとびぺんぎん)とする。
※「岩跳」は「いわはね」とも読めてしまう為。喧嘩っ早いなら「鳶」のほうが相応しい気がする。
○ Macaroni penguin [Eudyptes chrysolophus]
マカロニペンギン
ちり南端から亜南極の島々
ほぼ安定
黄色い眉羽根飾りをぴんと立て、凛々しい顔立ちで人気が高い。「マカロニ」は「イタリアかぶれの伊達男」から採られたもので、マカロニの直訳は意味がないから何か、洒落者を意味しつつマカロニを連想する字を当ててみよう。
牧、幕、誠似、枕弐。枕弐企鵝はそれらしい気もするが、今一つピンとこない。伊達男。洒落者。元の名と関係なくなってしまうが仕方がない。スタイルと知名度を武器に意訳だ。伊達企鵝(だてぺんぎん)とする。
※せやからね、無理してるわけではなくてね、「イワトビペンギン」が嫌なのよ。折角日本語なら漢字にしようや、と。「ロックホッパーペンギン」「マカロニペンギン」なら片仮名でええねんけど。漢字にするならこれという話。
○ Royal penguin [Eudyptes schlegeli]
ロイヤルペンギン/ソウゴンペンギン
マックウォーリー島
安定種
伊達企鵝の亜種とも考えられているが、頬が白いところが違う。和名が「荘厳ペンギン」であり、ロイヤルに応照させているものの、少々いかめしい。「ロイヤル」が連想しにくくなるが、伊達の亜種なら荘厳より軽くした方がいい。貴冠企鵝(きかんぺんぎん)とする。
※投遣の波到来。
○ Snares penguin [Eudyptes robustus]
スネアーズペンギン/ハシブトペンギン
スネアーズ島
安定はしているが少ない
孤島スネアーズ島が繁殖地で、島の名が英名となったが、島の名が「罠」ではどうにもならないので、和名そのまま嘴太企鵝(はしぶとぺんぎん)とする。
※眠気のピーク。しかし図書館は何故あんなに眠くなるのか。
○ Fiordland penguin [Eudypts pachyrhynchus]
フィヨルドランドペンギン/ビクトリアペンギン/キマユペンギン
NZ南島南西海岸及びスチュアート島
きわめて少ない
ユーディプス属は皆、冠眉が黄色いので特別この種を「黄眉」とするには抵抗があるが、まあよい。黄眉企鵝(きまゆぺんぎん)とする。
※もう疲れている。
●Megadyptes メガディプテス属 一種
○ Yellow-eyed penguin [Magadyptes antipodes]
イエローアイドペンギン/キガシラペンギン/キンメペンギン
NZ南島、スチュアート島、キャンベル島、オークランド諸島
かなり少ない
一属一種の企鵝で、絶滅が危惧されている。「Yellow-eyed」を「黄頭」「金目」とは複雑な解釈であるから、ここは単純に黄眼企鵝(おうがんぺんぎん)とする。
※眠すぎる。
●Spheniscus スフェニスカス属 四種
○ African penguin [Spheniscus demersus]
ケープペンギン
南アフリカ南部
危ない
この属はそれぞれ黒白模様で区別がつくが、この属内種同士で雑種が生まれ易い為、ガラパゴスを除いたケープ、フンボルト、マゼランを一種と見て計十六種と数える分類もある。胸から脇にかけての黒い点々模様は一羽ごとに違うので固体識別に役立つが、それは気が遠くなる。「ケープ」をそのままに岬企鵝(みさきぺんぎん)とする。
※もうこれでええやろ。
○ Humboldt penguin [Spheniscus humboldti]
フンボルトペンギン
ペルーからチリの海岸とプニフル島
絶滅危惧種
日本の動物園水族館で飼われているフンボルト全てを血統登録して近親交配の危険を無くして以降は順調に増えたが、それはあくまでも飼育管理上の話であって、野性に戻すほどの勢いはない。海外の施設に贈ればよいのだが、この種はワシントン条約一種である。独語人名フンボルトはもうどうしようもないので当てるしかない。吻戌企鵝(ふんぼぺんぎん)とする。
※「出会う」で飼育員の一人が「フンボ」と言っていたのでそうした。壊れ始めた。
○ Magellanic penguin [Spheniscus magellanicus]
マゼランペンギン
ホーン岬、フエゴ島、フォークランド諸島
安定だが海洋汚染が響きそう
マゼランの当字をそのままに「麦哲倫企鵝」としたいが、しかしこれは読めないので思い切って当てる。松蘭企鵝(まつらんぺんぎん)とする。
※マゼランの当字に図書館で三十分費やしたのに無駄となってもうやけくそ。
○ Galapagos penguin [Spheniscus mediculus]
ガラパゴスペンギン
ガラパゴス諸島
少ないが安定
ガラパゴスと言えば熱帯郷だ。熱帯郷と言えば柄が派手だ。もう先が読めただろう。強引にいくぞ。和名が「ガラパゴス」だから柄派郷企鵝(がらぱごぺんぎん)とする。
※壊れたからもうどうでもよい。
もう一度名前だけを一覧に整理しておこう。
●pygoscelis ピゴセリス属
○ Adelie penguin [pygoscelis adeliae]
愛照企鵝(あでりぺんぎん)
○ Chinstrap penguin [pygoscelis antarctica]
顎紐企鵝(あごひもぺんぎん)
○ Gentoo penguin [pygoscelis papua]
順通企鵝(じゅんつうぺんぎん)
●Eudyptula ユーディプテューラ属
○ Little penguin [Eudyptula minor]
侏儒企鵝(しゅじゅぺんぎん)
White-flipped penguin[Eudyptula albosigna]
羽白企鵝(はねしろぺんぎん)
●Aptenodytes アプテノディテス属
○ Emperor penguin [Aptenodytes forsteri]
皇帝企鵝(こうていぺんぎん)
○ King penguin [Aptenodytes patagonicus]
王様企鵝(おうさまぺんぎん)
●Eudyptes ユーディプテス属
○ Erect crested [Eudyptes sclateri]
眉立企鵝(まゆだちぺんぎん)
○ Rook hopper [Eudyptes chrysocome]
岩鳶企鵝(いわとびぺんぎん)
○ Macaroni penguin [Eudyptes chrysolophus]
伊達企鵝(だてぺんぎん)
○ Royal penguin [Eudyptes schlegeli]
貴冠企鵝(きかんぺんぎん)
○ Snares penguin [Eudyptes robustus]
嘴太企鵝(はしぶとぺんぎん)
○ Fiordland penguin [Eudypts pachyrhynchus]
黄眉企鵝(きまゆぺんぎん)
●Megadyptes メガディプテス属
○ Yellow-eyed penguin [Magadyptes antipodes]
黄眼企鵝(おうがんぺんぎん)
●Spheniscus スフェニスカス属
○ African penguin [Spheniscus demersus]
岬企鵝(みさきぺんぎん)
○ Humboldt penguin [Spheniscus humboldti]
吻戌企鵝(ふんぼぺんぎん)
○ Magellanic penguin [Spheniscus magellanicus]
松蘭企鵝(まつらんぺんぎん)
○ Galapagos penguin [Spheniscus mediculus]
柄派郷企鵝(がらぱごぺんぎん)結局「皇帝」「王様」「眉立」「嘴太」「黄眉」はそのままであったが、これは漢字の和名があるならそれで納得するのである。
和名とは、勝手に付けて呼んでもよいことになっているから遊べる。一応和名としてはこれを標準にという和名があるのは混乱を防ぐ為。使う人の数ではなく、使う側の立場が強いのでこうして和名を呈してもまるで意味がないことくらい判ってはいるが、手前は以降これを使うことにする。
企鵝に対する親近感は、おそらく鳥なのに妙に人間臭い振る舞いが影響しているのだろう。企鵝が海の中で飛ぶように泳ぐ姿を最初に見た場合、感心はしても入れ込む事はないに違いない。よたよたと歩く姿に魅せられて後に泳ぐ姿を見ると、この順番なら確実に嵌るのであって、つまり、つまり、つまり、手前がペンギン大好きで何が悪いか。
※前中後を合わせました