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筒井康隆
SAKI


 オールタイムベストテン・国内篇です。ただし、全ての作者は「外れなし」を基準にしております。外れなし作家を十人無理矢理に選び、それぞれの最も面白い作品を合わせて十作。偏りがありすぎることは承知の上です。偏りがあることは承知の上ですが、読んでみて失望はありません。問答無用でお勧めします。

筒井康隆「残像に口紅を」中公文庫
 言わずと知れた筒井康隆。この名前を知らない方はどうぞお引き取りのほどを。筒井康隆を読まない人とはお話したくありません。次に日本人がノーベル文学賞を貰うとすれば「筒井康隆もしくは赤江瀑」であり、現代文学史に名を残す二十世紀を代表する作家であります。知らない人は相手にしません。知っている人に。「朝のガスパール」か「虚構船団」か「旅のラゴス」で迷ったが最終的に最も筒井康隆らしいと考えてこれを選びました。最近自選短篇集がたくさん出て今まで古本屋を歩き回ってコツコツ集めた時間が空しく思えてきたのですが、それでも古本屋めぐりをやめるつもりはありません。奇想天外文庫の「筒井康隆全漫画」を50円均一で見つけた時の喜びを再び味わいたいのです。全集が出たら迷わず買います。第一期の時はまだ高校生でそこまで嵌っていなかったものですから。
白石一郎「海狼伝」文春文庫
 本読みの誰もが必ず通る道、時代小説で宝石を見つけた。城山三郎の「秀吉と武吉」で三島村上水軍になじみがあったので素直に入り込めた。時代小説の大家と呼ばれる人の作品は大抵会話ばかりで「出来損ないのラジオドラマのシナリオ以下」と評したくなることが多い中、じっくり書き込む新田次郎、池宮彰一郎、白石一郎の作品は安心して読める。およそ三十分で読了し、後に何も残らないようなかすかすのものに比べて、比べることが間違っているが、小説と呼べるのはこちらのほうだ。大体文庫本を立てて例えば居合い抜きなりで上下にすぱりと切ってみたとしようか。上半分にはタイトル。下半分には著者名。中身はと言えば、ほとんどが会話なものだから下半分はそのままメモ帳に使える。上半分だけで事足りるものを馬鹿高い値段で買う馬鹿も馬鹿だが、そのように切った上半分のものを集めてどれが誰の作品か判別できるかい?
「む」
「うむ」
「そうか」
「そうだ」
こんな会話させてリアリティがあるとでも思っておるのかね。手抜きやがって枚数稼ぎやがってと思うだけなのですがね。新田次郎、池宮彰一郎、白石一郎にはそれがない。白石一郎より新田次郎を入れるべきではあるが、白石一郎のさり気ないユーモア感覚が好みでこちらを選ぶ。
沢木耕太郎「深夜特急」新潮文庫
 高校生の時にバーボン・ストリートを読んでそのまま深夜特急になだれ込んだ。もしこれを読んでいなければどんな人生を選んでいたのかと考えることがある。新しく気に入った作家が出来ると集中的に読み込むことが多い。沢木耕太郎も深夜特急で気に入った勢いに任せて片っ端から読んだらノンフィクションに目を開かれた。以降、山際淳司に猪瀬直樹に柳田邦男とノンフィクションが自分の中で一つの柱になった。深夜特急の内容についてごたくを並べるつもりはない。これはただ読むしかない。
佐々木譲「ベルリン飛行指令」新潮文庫
 骨太さ、スケールの壮大さ。日本の冒険小説の最高峰だ。航空小説には福本和也がいたし、戦記物を書く作家は数えきれない。なのにそこに切り込んで大成功した。この作品は山周賞を穫った。当然だろう。佐々木譲の作品はおよそはずれがない。ただ、コバルト文庫で少女向けの小説を書いたことがあるらしく、一度読んでみたいのだが、そういう棚の前でじっくり探すのはどうも落ち着かないのでまともに探したことはない。
山本夏彦「私の岩波物語」文藝春秋 
 日本でたった一人本物と呼べるコラムニストの、これは著者が経営していた出版社「工作社」の社史である。しかし社史とは売れないものと相場が決まっていて、資料的価値しかないものであるが、直木賞作家和田芳恵が手掛けた筑摩の社史だけは読むに耐えると言う。自らを語るふりして言論と出版の百年小史を意図し、筑摩に続く「読まれる社史」を目指したこの本は、言論と出版の問題を余すことなく抉り出している。題名に岩波があり、当然岩波を鮮やかに斬っている。何が鮮やかかと言うと、読めば判る。岩波、講談社、社史、建築雑誌、電通などの広告代理店、筑摩、赤本、中央公論、原稿料、髪、印刷、製本屋、取次、あっちを褒めてこっちを刺し、まさに山本夏彦の至芸が全て詰まっていると言える。実は山本夏彦のコラムに解説など要らないし、半端な書評もかえって底が割れてしまう。誰も書かない、書けない、当たり前の事を、当たり前に書いているだけであって、ただそれを読めばいいのだ。 全集をどこか出さないか。必ず買うぞ。
赤江瀑「妖精達の回廊」文春文庫
 赤江瀑。どうもマニアックかも知れませんが、この人をはずすことは出来ません。存命中の作家で文庫本にプレミアがついているのはこの人が一番でしょう。海外では評価が高くて日本では不当に低い。いや、低いわけではない。きちんと評価はされているが、知名度が。まあ、読者からすれば、自分だけこっそり楽しみたいという思いともっともっと知られてほしいという欲求のせめぎ合いの中で新作を待っているのが楽しくてしようがない。「妖精達の回廊」これは錦鯉をテーマにしている。というかくわしく教えたくない。古本屋で探してみたまえ。
真保裕一「奪取」講談社文庫
 はずれなし作家というのはそうそう簡単に見つけることは出来ません。見つけたら大切にしましょう。最近連載が多くなって初期の入り組んだプロットが懐かしく思えたりすることもありますが、それでも他の作家に比べで綿密に書き込んでいるので読みごたえがある。この作品は偽札作りの話だが犯罪小説に思わせないあたりが真保裕一の力量を示している。
野田知佑「魚眼漫遊大雑記」新潮文庫
 高校生のときに野田知佑と筒井康隆にはまって以来、人生の階段を踏み外して複雑骨折したまま未だに立ち直れない。いくつかあるエッセイの中でこれを選んだのは一番丁寧にかかれているからだ。北杜夫の「どくとるマンボウ航海記」と同じ系列だが、こちらのほうが馴染みやすい。法螺吹きは嫌いなのだ。
池宮彰一郎「島津奔る」新潮文庫
 時代小説で泣ける作品などめったにあるものでない。「四十七人の刺客」「四十七人目の浪士」とクライマックスではぼろぼろ泣いた。そこにきて島津が奔ればもう完敗だ。映画の脚本家として盛り上げ方を心得ているのが最近の作家にはない武器で読者としてこれほど嬉しいことはない。
小林信彦「ぼくたちの好きな戦争」新潮文庫
 たまたま浅草の本屋で買ってそのまま一気に読んでしまった。これが最初に読んだ小林信彦の作品で、気に入ったので次々と読んでいくうちに実は最初に読んだものが一番傑作だったという幸運に恵まれて、現在は古本屋でオヨヨ大統領シリーズをコツコツ集めているところである。初見の作家で最初に読んだものがたいしたことがなかった時、そこで切れてしまうことが多い。最初に読むものが一番だった場合、後に読むものは常に最初のものより劣ることになるのだが、それは読む前にはわからないから今度はどうだろう今度はどうだろうと常に期待感がある。そしてその期待を裏切らない小林信彦に拍手喝采を送りたいのだ。


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